【800記事/400動画を掲載!】記事と動画でAI活用・業務改善を学べるメディア。AI、クラウドツールを使用して中小企業の業務改善を応援!

建設業の実行予算をAIで作成!現場の振り返りを「組織知」に変えて予算の精度を高める方法

目的 実行予算の作成にAIを活用し、ベテランの見立てや現場の振り返りを組織全体で共有できる仕組みを作りたい
課題 ・実行予算の作成が現場監督・担当者個人の経験に依存し、精度にばらつきがある
・予算と実績の差異が振り返られず、同じ原因の赤字を繰り返している
効果 ・経験の浅い担当者でも、ベテランに近い精度の実行予算を短時間で作成できる
・予算と実績の差異理由が蓄積され、赤字案件の再発を防げる

建設業の実行予算は、現場監督や担当者個人の経験に頼って作られることが多い業務です。
ベテランであれば現場条件から原価の膨らみ方を見立てられますが、経験の浅い担当者には難しく、予算の精度に大きな差が出てしまいます。

作成に時間が取れずにどんぶり勘定のまま着工したり、予算と実績の差異を振り返らずに同じ原因の赤字を繰り返したりするケースも少なくありません。

そこで有効なのが、ベテランの見立てや現場の振り返りをAIに学習させ、会社の資産として蓄積していく「組織知」の形成です。
組織知が貯まるほど、新人でも精度の高い実行予算を作れるようになります。

この記事では、実行予算の作成で組織知を形成する方法を、kintoneと生成AIを組み合わせた例で紹介します。

建設業の実行予算作成によくある課題

建設業の実行予算作成の現場では、次のような課題がよく見られます。

  • 実行予算の作成が現場監督・担当者個人の経験に依存し、精度に大きなばらつきがある
  • 実行予算を作る時間が取れず、着工後にどんぶり勘定で進んでしまう
  • 予算と実績の差異が振り返られず、同じ原因の赤字を繰り返している
  • ベテラン監督の引退が近く、原価の見立てのノウハウを継承できていない
  • 案件の利益率の見通しが、終わってみないと分からない

このように、実行予算の作成を個人の経験に頼っていると、案件ごとの利益が読めず、赤字の原因も組織に残りません。
ベテランが引退すれば、原価を見立てる力そのものが社内から失われてしまう恐れもあります。

これからの実行予算作成はAIを使った「組織知」の形成がカギ

上記のような課題を解決するためには、「組織知」の形成が有効です。
これからは、組織全体でAIを活用して、「AIを使って成果を再現できる組織」になっていくことが重要になります。

ここからは、組織知とは何か、どうすれば形成できるのかについて解説します。
組織知の考え方については、DX担当者勉強会のレポートで詳しく紹介しています。詳細はこちらをご覧ください。

▼AIを使って成果を再現できる組織になるには?|第33回DX担当者勉強会レポート

組織知とは

組織知とは、個人が持つ知識やノウハウを組織全体で共有・蓄積し、組織の資産として活用できる状態にした知識のことを言います。
コムデックでは、これからの時代の組織知は「組織知=人的資本 × AI資本」で表せると考えています。

ここで言う「人的資本」とは、社員一人ひとりの知識、判断力、人間関係づくり、発想力、パターンを見抜く力などを指します。
また「AI資本」とは、会社として構築・蓄積していくAI活用の仕組みのことで、ワークフロー、独自データ、AIロジック、評価の蓄積などが挙げられます。

この人的資本とAI資本が相互に学習し合うループを回すことで、他社には無い独自の組織知が形成されていきます。
組織知とは

「個人でのAI活用」と「組織でのAI活用」の違いを整理すると、次のようになります。

個人でのAI活用 組織でのAI活用
目的 作業の自動化、効率化 学習ループ、独自の「組織知」を形成
活用方法 AIを単発で使い、個人の生産性向上に利用 AIを組織横断で使い、知識・経験・成果をAIに学習させつつ利用
AIの役割 人間の作業を補助、スピードアップ 人とAIが相互に学習する(日々の業務記録や顧客とのやりとり、試行錯誤を人とAIの間で循環させる)
ポイント できていないことをAIにやらせる AIを活用し付加価値を高める

使うたびに賢くなっていくAIと共に、自社の業務フロー、専門知識、積み重ねてきた判断力を磨き上げ、共に進化し続ける組織を目指したいところです。

AIで組織知を形成する方法

「組織知」の形成に欠かせない独自の「AI資本」は、次の4つのステップで作られます。

  1. AIが学習するためのデータベースを作る(一次情報、一次解釈の蓄積)
  2. AIがデータベースからアウトプットを生成する
  3. 2のアウトプットに対して、人の意見・判断・成果をフィードバックする
  4. AIがフィードバックの内容を学び、次のアウトプットに活かす

ここで見直したいのが、管理されている情報の種類です。
打ち合わせ履歴や契約内容、CRMなどの一次情報は、しっかり管理されている企業さまが多いでしょう。

そこに加えて、一次解釈として、担当者の感じたことや成功・失敗などの要因、振り返りなどを登録できるようになっているかがポイントです。

kintone × AIで実行予算を作成する仕組みを構築する方法

ここからは、kintone(キントーン)とAIで実行予算を作成する仕組みを構築する流れを、先ほど紹介した組織知形成の4つのステップに沿って解説します。
今回は、港湾工事(岸壁基礎工事)の実行予算作成を例に見ていきましょう。

なお、今回紹介する仕組みは、コムデックの「建設業 業務改善パッケージ」にも組み込まれています。
AIで実行予算案を作成する仕組みについては、こちらの記事でも詳しく紹介しています。

▼AIで実行予算案を自動作成!建設業のベテラン属人化を解消する方法

1.過去の実行予算と原価実績、現場の振り返りを蓄積する

はじめに、AIが学習するためのデータベースとして、2つのアプリを用意します。

1つめは、類似工事の実行予算と原価実績を管理する「過去の実行予算アプリ」です。

過去の実行予算アプリ

2つめは、現場毎にその日誰が何時間作業にあたったかを記録する「日報管理アプリ」です。

日報管理アプリ

これらのアプリには、受注内容と見積、過去案件の実行予算、実際にかかった材料費・労務費・外注費・経費の実績、差異が出た原因や現場の振り返りを蓄積していきます。

ポイントは、実行予算と原価実績の突き合わせ、そして差異の理由(一次解釈)を記録することです。
「なぜ予算を超えたのか/収まったのか」を現場が一言でも残せる仕組みにすることで、AIは自社特有の原価の膨らみ方を学習できるようになります。

2.コムデック 生成AI for kintoneで実行予算案を作成させる

続いて、「コムデック 生成AI for kintone」を設定します。
コムデック 生成AI for kintoneは、kintoneとChatGPTを連携し、kintone内の情報をAIで活用するためのサービスです。

主な特徴は次の6つです。

  • データ参照・検索・分析:kintoneのデータをAIに参照させて、データの検索・分析・入力が簡単にできる
  • 複数アプリ横断参照:1つのアプリだけでなく、複数のアプリの情報を横断的に参照できる
  • 結果の自動保存:AIによる出力結果をkintoneのフィールドに保存できる
  • AI-OCR対応:画像ファイルやPDFファイルを読み込んでデータを登録できる
  • 柔軟な設定:参照アプリ、プロンプト、出力アプリなどの設定をすべてkintoneのアプリ内で行える
  • リアルタイム実行:ボタンでの実行だけでなく、Webhookを用いたリアルタイム実行も可能

今回は、AI設定アプリで「実行予算作成」の設定を登録しました。

実行予算作成

プロンプトでは、AIに「建設工事の積算・予算管理の専門家」という役割を与え、自社の科目体系(経理科目・現場科目)に沿って実行予算の叩き台を作るよう指示しています。
また、過去データは時期に応じて原価高騰分を補正するよう設定し、古いデータほど大きく補正するようにしました。

実際に使うときは、実行予算アプリで工事名、工事タイプを登録し、打合せ内容(文字起こし)などの実行予算を作成するためのベースとなる情報を登録した上で「実行予算作成」ボタンを押します。

実行予算作成

AIは見積内容と、工種・規模・条件が近い過去案件の実行予算と原価実績を参照し、科目別の実行予算案を出力します。
出力される内容は次のとおりです。

  • 明細合計
  • 科目別の算出根拠(労務費、外注費、材料、資材、リース、燃料、宿舎経費など)
  • 各科目の「過去実績(同工事)」「今回予算」「算出理由」

今回の例では、明細合計は195,663,000円となりました。
例えば燃料は、過去実績5,368,000円に対して今回予算は7,200,000円です。

重機の稼働増と燃料単価の上昇に加えて、稼働日が超過しがちな過去の傾向を踏まえて10%上乗せした、という算出理由まで科目ごとに提示してくれます。

出力される内容

ここまでが、AI活用そのものの仕組みです。
組織知を形成するうえで本当に重要なのは、ここから紹介するステップ3と4になります。

3.現場責任者のフィードバックを組織知の候補として登録する

現場責任者は、AIが提示した予算案を確認し、今回の現場条件(立地、工期、職人の確保状況、施主のご要望など)を踏まえて精査します。
修正したい点があれば、出力結果の下の入力欄に修正内容とその理由を入力して「修正を依頼」します。

修正の依頼は10回まで可能です。
今回の例では、次のようなフィードバックを入力しました。

フィードバック

フィードバックを返すと、出力結果が書き換わります。
画面には「変更されたフィールド:4件」のように変更件数が表示され、フィールドごとに「変更前/変更後」が並べて表示されるので、どこが変わったのかがひと目で分かります。

フィードバックを返すと、出力結果が書き換わる

内容に問題が無ければ「この内容で保存」をクリックします。
保存すると「この修正内容をメモリに登録しますか?」と表示され、AIがフィードバックから組織知の候補を抽出して提示してくれます。

今回の例では、次の3つの候補が提示されました。

  • [ルール/重要度:中] 潮流等で投入誤差や手直しが発生しやすい材料は、予備数量を別途計上する
  • [ルール/重要度:高] 海象・天候等で稼働停止が想定される作業は、外注費に稼働ロス分の上乗せを見込む
  • [ルール/重要度:高] 燃料費は過去実績比で上昇が見込まれる場合、一定の上振れ率を加味して見積もる

登録したいものにチェックを入れて、「選択した内容を登録」をクリックします。
ただし、この時点ではまだ「候補」として登録されるだけで、すぐにAIに反映されるわけではありません。

メモリに登録

4.管理者が承認し、次回以降の実行予算に反映する

登録されたフィードバックは、メモリ候補アプリに「候補」として蓄積されます。

メモリ候補アプリ

AI設定アプリの「メモリ・対話設定」からも、未承認の候補件数を確認できます。
今回の例では、未承認の候補が3件あることが表示されています。

メモリ・対話設定

管理者は「メモリ候補のレビュー」画面で内容を確認し、「承認」または「却下」を選びます。
会社の方針や考えに沿わないフィードバックは却下し、より良いフィードバックだけを反映させることが大切です。

また承認する前には、個人情報や機密情報が含まれていないか、今後も普遍的に適用してよい内容かを確認しましょう。

メモリ候補のレビュー

なお、メモリ候補アプリ側でステータスを承認にする方法でも承認できます。
承認すると内容はメモリ本文に記録され、次回以降AIを動かす時のプロンプトに自動で組み込まれます。

メモリ本文は「ルール」「事実」「フィードバック」のセクションに分かれていて、1行=1メモリとして、日付と重要度、本文、由来の形式で記録されます。

プロンプトに自動で組み込まれる

このステップ1〜4が一周するたびに、現場条件と原価の関係をAIが学習し、より実態に近い実行予算を作れるようになります。

組織知の形成にkintone × AIを活用するメリットとは

今回の仕組みづくりで特に重視したのは、ステップ1のうち、実行予算と原価実績の突き合わせと、差異の理由(一次解釈)の記録です。
金額だけが残っていても、AIは過去の数字をなぞることしかできません。

差異の理由まで残っているからこそ、AIは自社特有の原価の膨らみ方を学習できるようになります。

具体的には、次のようなフィードバックを蓄積していきます。

  • 予算を修正した科目と、その理由(立地、搬入条件、職人の手配状況、工期、天候リスクなど)
  • 想定より原価が膨らんだ/収まった要因
  • 「この条件の現場ではこの歩掛りを使う」といった自社の見立ての基準
  • 予備費の積み方、リスクの見込み方

これにより、ベテランが頭の中で行っていた現場条件の読み替えが記録として残り、組織全体で再現できるようになります。
人の役割は、AIの予算案を今回の現場条件に合わせて最終決定することです。

竣工後には、実際の原価と差異の要因も記録して、次の実行予算の精度向上につなげていきます。
この仕組みを活用することで、経験の浅い担当者でも、ベテランに近い精度の実行予算を短時間で作成できるようになります。

作成にかかる工数が減ることで、着工前にきちんと予算を組む運用も定着していきます。

さらに、予算と実績の差異理由が蓄積されることで赤字案件の再発を防げるほか、案件ごとの利益率の見通しが早期に立ち、受注可否や人員配置といった経営判断も速くなります。
ベテラン監督が培ってきた原価の見立ても、会社の資産として継承されていきます。

AIで実行予算の精度を高め、ベテランの見立てを会社の資産にしよう!

建設業の実行予算の作成を個人の経験に頼っていると、予算の精度にばらつきが出て、赤字の原因も組織に残りません。
過去の実行予算と原価実績、現場の振り返りを蓄積し、AIの予算案に現場責任者がフィードバックを重ねることで、効率良く「組織知」を形成できます。

組織知が蓄積されるほど予算の精度は上がり、経験の浅い担当者でも着工前に根拠を持って予算を組めるようになります。
kintoneでデータを蓄積し、AIで分析、さらにkintoneを介して共有・活用することで、組織全体で原価に対する意識を高めることもできます。

コムデックでは、kintone × AIの活用をサポートする「コムデック 生成AI for kintone 導入コンサル」というサービスを提供しております。
「ベテランの原価の見立てを社内に残したい」「AIを活用したいけど何から始めたら良いのか分からない」という方も、ぜひお気軽にご相談ください。

「コムデック 生成AI for kintone 導入コンサル」サービスページはこちら

この記事を書いた人

西道 涼

課題を見抜き解決に導くスペシャリスト

コムデックのkintone事業部部長として、中小企業の業務改善とDX/AI推進を支援しています。 会社ごとの悩みや業務上の課題を丁寧にヒアリングし、単にITツールを導入するのではなく、「ITやAIを活用して課題をどう解決し、業務をどう変えていくか」まで見据えた提案を得意としています。 特にkintoneの導入支援や、導入後の活用・定着を支える伴走支援に強みがあり、課題整理から要件設計、構築、運用改善まで一貫してサポート。 お客様の立場に立って最後まで責任を持って向き合う姿勢から、長期にわたり厚い信頼をいただいています。

IT導入のお悩みなら、
コムデックラボ

まずはお気軽にお問い合わせください。

関連記事

まずはお気軽にご連絡ください

お役立ち資料

業種別のkintoneアプリガイドや、コムデックが提供しているサービスのご紹介資料をダウンロードいただけます!

お役立ち資料

お問い合わせ

「伴走支援について詳しく聞きたい」「こんな課題を解決したい」等、お気軽にお問い合わせください!

お問い合わせ

動画でもお役立ち情報発信中!

kintone芸人