人材育成にAIは活用できる?プロンプトや退職リスクを分析する実例も紹介

人材育成や離職防止は、企業にとって重要な課題です。
一方で、具体的な策が講じられず、現場や管理者任せになってしまっているという方も多いのではないでしょうか。
個人の感覚やスキルに頼った教育は効果が低く、不満や不安も生まれやすくなってしまう傾向にあります。
そこでおすすめなのが、AI活用です。
AIを活用すれば、客観的なデータに基づく教育や退職リスク分析などが可能になります。
本記事では、人材育成や退職リスク分析にAIを使う方法を解説します。AIを活用してみたい方、離職率を改善したい方は是非ご覧ください!
この記事でわかること
- 人材育成や退職リスク分析にAIを活用する方法
- 人材管理でAIを活用する際におすすめのツール
こんな人におすすめの記事です
- 個々に合った、効果的な人材育成を実現したい方
- 退職リスクを早期に把握して対策し、定着率を高めたい方
目次
AI活用は人材育成の分野でも広がっている
近年、人材育成の手法は大きく変化しています。
かつては終身雇用や年功序列を前提に、全員が同じ研修プログラムを受け、上司の主観で評価が行われるのが一般的でした。
しかし、現在は転職する人も珍しくなく、人事評価では成果が重視されるようになっています。
人材育成に関しても、1人ひとりの特性に応じた育成プランや、客観的で公平な評価が求められるのが特徴です。
そのため、従来型の人材育成を続けていると優秀な人材はどんどん流出してしまいます。
そこで今、注目されているのがAIの活用です。
AIを活用すれば、膨大なデータをもとに従業員のスキルや成長度合いを分析し、最適な育成プランを提示できます。
客観的な評価や、効率的なスキル開発を支援することで、従業員の成長と定着率向上を両立させられるのです。
離職率の改善に役立つ「退職リスク分析」
労働力人口が減少する中で、企業が人材を確保するためには、離職を防ぐことが欠かせません。
ここでは、離職率の改善に役立つ「退職リスク分析」について解説します。
退職リスク分析とは
退職リスク分析とは、従業員の属性や勤務状況などのデータをもとに退職の可能性を評価することです。
職場環境や人事評価、勤怠の傾向などを幅広く見える化することで、退職につながりやすい兆候を早期に把握し、未然に防ぐことを目的としています。
例えば、遅刻・欠勤が多い従業員や、直近で評価が低下している従業員などは、不安や不満を抱えている可能性が高いと考えられます。
このような従業員を早期に把握し、面談や配置転換といった対応を行うことで離職を防げれば、結果として企業の生産性や業績も向上します。
退職リスク分析に必要なデータ
退職リスク分析には、多角的なデータの収集と分析が欠かせません。
一般的には、次のようなデータを使用します。
- 性別、年齢
- 部署、職種、役職
- 新卒/中途、勤続年数
- 面談記録
- 給与履歴
- 評価履歴
- 異動履歴
- 勤怠データ(残業、有休、欠勤、遅刻早退など)
- ストレスチェックの結果
例えば、勤怠データで残業が続いている場合でも、長時間労働に対する受け止め方は人によって異なるため、これだけで「退職リスクが高まっている」とは断定できません。
しかし、面談記録やストレスチェックの結果も総合して見れば、その人の感じ方や悩みが詳しく見えてくることがあります。
このように、単一のデータでは判断できない要素も、複数の視点を組み合わせることで精度の高い分析が可能になります。
人材育成や退職リスク分析にAIを活用するメリット
人材育成や退職リスク分析には、AIの活用が有効です。
AIを活用するメリットを、以下で詳しく解説します。
データに基づく客観的な分析ができる
AIを活用することで、感情や相性といった主観に左右されない、公平かつ客観的な人事管理が可能になります。
大量の人事データを統計的に処理することで、従来なら見逃されていたパターンや相関関係を発見できるのがメリットです。
また、過去のデータと現在の状況を比較することで、より信頼性の高い予測を立てられるのも大きな強みです。
これにより、従業員1人ひとりの状態を正確に把握して最適な施策を打てるようになります。
教育担当者の負担を軽減できる
これまでの教育担当者は、大人数の状況把握や面談準備に多くの時間を費やしてきました。
しかし、AIを導入すれば従業員ごとのデータを一元管理できるため、準備の手間を大幅に削減できるのがメリットです。
経験豊富な担当者のノウハウをAIに蓄積すれば、属人的な運用から脱却し、組織全体で効率的に人材育成を進められます。
個々に応じた施策を提案できる
AIを活用すると、従業員ごとの強みや弱みを分析し、最適な育成プランを提示できることもメリットです。
退職リスクが高い従業員に対しては、どのようにケアすべきかもアドバイスしてくれます。
さらに、AIなら従業員のキャリア志向に応じて、適切な成長機会や学習プログラムを提案することも可能です。
過去の事例から得られる成功パターンを参考にすることでより効果的な施策を講じることができ、従業員の定着やモチベーション維持に役立ちます。
分析結果や推移を可視化できる
AIを活用すると、分析結果を誰にでも分かりやすく可視化できます。
例えば、部署別や職種別の比較結果をグラフで表示したり、退職リスクを色分けした組織マップを生成したりできます。
また、施策の前後でどのように状況が変化したのかも簡単に比較できるため、効果を確認しながら軌道修正することも可能です。
さらに、経営陣向けのレポートを作成すれば、意思決定を迅速化したり、戦略的な人材マネジメントを後押ししたりもできます。
人材管理にAIを活用するならkintoneがおすすめ
人材管理にAIを活用するなら、業務管理アプリ「kintone(キントーン)」がおすすめです。
kintoneはさまざまなアプリをノーコードで簡単に構築できるため、人事情報や勤怠データ、評価データなどをワンストップで管理できます。
組織体系や管理項目も柔軟にカスタマイズできるため、自社の仕組みにフィットしたアプリを作成可能です。
権限設定によるアクセス制御もできる他、AIツールをはじめとする外部サービスとの連携も容易で、既存の勤怠システムや人事システムを活かした運用を実現できます。
人材管理におけるkintone活用については、こちらの記事でも詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。
▼kintoneによる活動状況の見える化で人事評価を正確に!|製造業 中勢製氷冷蔵株式会社さまのアプリ開発事例
kintoneとAIで人材育成プランの作成や退職リスク分析を行う手順
ここからは、実際にkintoneとAIを連携して分析を行う手順について解説します。
まずは分析に使うアプリを準備します。
「従業員名簿アプリ」では、氏名、入社日、雇用形態、部署、役職、業務内容、面談履歴などを管理します。
「人事評定管理アプリ」では、氏名、評価年度、評価、評価コメント、年収、昇給額などを管理します。
アプリが用意できたらkintoneとAIツールを連携して、「組織全体の課題分析」「個人の人材育成プランの作成」「退職リスク分析」という3つの分析の設定に進みます。
組織全体の課題を分析
組織全体の課題を分析するためのプロンプト(指示文)がこちらです。このプロンプトをAI設定アプリに登録しておくことで、分析が可能となります。
# 役割
あなたは人事戦略の専門家であり、データ駆動型の組織分析アシスタントです。 ・目的:従業員データを詳細に分析し、組織全体の人事課題を特定し、その改善提案を行うことです。 # 指示 提供されたデータ、および取り組みの背景を深く理解した上で、以下の情報を詳細に分析し、生成してください。 また「ユーザー入力項目」に指示の記載があれば、そちらも考慮すること。 1. 組織課題の抽出 * データ全体を統合的に分析し、組織全体の人事課題を抽出します。これには、以下の観点を含めます。 * 評価の偏り: 特定の部署や役職、評価担当者による評価傾向の偏りがないか。 * 離職傾向: 特定の部署、役職、雇用形態、または入社時期の従業員に離職の兆候や高い離職率が見られないか。 * 育成ニーズ: 全体的なスキルギャップ、または特定のスキルや知識が不足している部門や層がないか。 * エンゲージメント: 面談内容や評価コメントから、従業員全体の士気や満足度に関する共通の課題がないか。 * 報酬水準: 評価と昇給額の相関関係、想定年収と今期年収の差異から、報酬体系に関する課題がないか。 * 抽出された組織課題に対し、具体的な改善提案を行います。これには、人事制度の見直し、全社的な研修プログラムの導入、マネジメント層へのコーチング、コミュニケーション改善策などが含まれます。 # ユーザー入力項目 %ユーザー入力項目% # 注意点 ・抽出する課題は、データに基づいた根拠を明確にしてください。 |
分析結果を保存するアプリでは、分析対象の部署等を指定して保存すると、以下のようなボタンが表示されます。今回は、この中から「従業員情報を元にした人材育成プランと離職リスク予測」を実行しました。
実際のアウトプットがこちらです。
部署としての課題や、各課題に対する具体的なアクションも提案されました。
個人の人材育成プランの作成
続いて、個人ごとの育成プランを作成するためのプロンプトがこちらです。
# 役割
あなたは人事戦略の専門家であり、データ駆動型の人材育成プランナーです。 ・目的:従業員データを詳細に分析し、従業員一人ひとりに適した個別の人材育成プランを提案することです。 # 指示 提供された従業員名簿と人事評定管理のデータ、および取り組みの背景を深く理解した上で、以下の情報を詳細に分析し、生成してください。 また、「ユーザー入力項目」に指示の記載があった場合、それも考慮すること。 3. 個別の人材育成プラン * 各従業員について、氏名、部署、役職、業務内容、入社日、面談日、面談内容、評価、評価コメント、昇給額、今期年収などの情報を統合的に分析します。 * それぞれの従業員の現在のスキルレベル、強み、改善が必要な点、およびキャリアプラン(面談内容や業務内容から推測される方向性)を具体的に記述します。 * これらの分析に基づき、個別のニーズに合わせた具体的な育成プランを策定します。プランには以下の要素を含めてください。 * 推奨される研修プログラム: 社内研修、外部セミナー、オンラインコースなど。 * OJTの機会: 具体的な業務経験やプロジェクトへの参加。 * メンターシップまたはコーチング: 経験豊富な社員との連携や専門家からの指導。 * 資格取得支援: 業務に関連する資格取得の推奨と支援。 * 目標設定: 育成プランに沿った具体的な目標設定の提案。 # ユーザー入力項目 %ユーザー入力項目% # 注意点 ・育成プランは、従業員の現状と将来のキャリアパス、組織のニーズの双方を考慮して策定してください。 |
分析の結果、次のような育成プランが出力されました。
こちらも、個人ごとの履歴をわかりやすく要約したうえで、強み、改善点、具体目標などがひと目で分かるようにまとめられています。
これなら、面談前に上司が資料を作成する時間も大幅に削減できるでしょう。
退職リスク分析
最後に、退職リスク分析をご紹介します。
以下はプロンプトの一例です。
# 役割
あなたは人事戦略の専門家であり、データ駆動型の離職リスク分析アシスタントです。 ・目的:従業員データを詳細に分析し、離職の兆候がある従業員を特定し、具体的な離職防止策を提案することです。 # 指示 提供されたデータ、および取り組みの背景を深く理解した上で、以下の情報を詳細に分析し、生成してください。 また、「ユーザー入力項目」に指示の記載があった場合、それも考慮すること。 2. 離職リスク予測 * 在籍状況、入社日、面談日と面談内容、評価、評価コメント、今期年収、想定年収など、離職兆候を示唆する可能性のあるデータポイントを特定します。特に、過去の評価の推移、面談でのネガティブな発言、昇給額と評価の不一致、特定の業務内容や役職での傾向に注目してください。 * 離職の兆候が見られる従業員を特定し、その可能性のある原因を具体的に記述します。例として、評価の停滞、特定の面談内容、業務内容と評価の不一致、キャリアパスへの不満などが考えられます。 * 特定された従業員一人ひとりに対して、具体的な離職防止策を提案します。これには、個別面談の実施、業務内容の見直し、キャリアパスの提示、報酬体系の見直し提案、メンタルヘルスサポートの推奨などが含まれます。 # ユーザー入力項目 %ユーザー入力項目% # 注意点 ・離職リスクの判断は慎重に行い、データに基づいた客観的な根拠を提示してください。 |
今回は、このプロンプトを元に、従業員名簿と人事評定管理を参照しています。
実際の出力結果がこちらです。
退職リスクについては、個人ごとに退職の兆候を察知して文章で出力されています。
退職の防止策についても「昇進のロードマップを提示する」「裁量のある新規案件も積極的に任せる」など、具体的なものが提案されています。
もっと詳しく分析するのなら、勤怠のデータや業務日報など、多くのデータを参照アプリとして設定するとより精緻な分析ができるようになります。
AIを活用した人材管理で組織の成長を加速させよう!
人材管理にAIを活用すると、従業員1人ひとりに合わせた育成プランの策定や、離職予防のための早期対応が可能になります。
これにより、従業員の成長が速まったり、モチベーションを維持・向上したりして、企業全体の生産性や業績アップにつなげられるのがメリットです。
AIを上手に活用して、効率的かつ戦略的な人材マネジメントを実現しましょう。
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