建設業におけるリスクアセスメントにAIを活用して業務効率化を図る事例を紹介

建設業界では、人材確保や安全管理の難しさ、生産性の低さなどが課題となっており、DX化も他の業種に比べて遅れているのが現状です。
総務省が行った「DXによる経済へのインパクトに関する調査研究」によれば、他業種では30~40%の企業がDX化に取り組んでいるのに対し、建設業は20.7%とかなり低い結果となりました。
建設業の皆さんの中には「DX化はしたいけど、何から手をつければ良いのか分からない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんなときにおすすめなのが、AI活用です。
AIを活用すれば安全管理や業務改善を効率化でき、他社と差別化するチャンスにもなります。
そこで本記事では、建設業のAI活用事例の一つとして、リスクアセスメントにおけるAI活用方法を解説します。
この記事でわかること
- リスクアセスメントにAIを活用する方法
- リスクアセスメントでのAI活用におすすめのツール
こんな人におすすめの記事です
- 工事現場における安全管理を徹底し、潜在的なリスクへの対策もしたい方
- リスクアセスメントを効率化したい方
目次
建設業におけるリスクアセスメントの目的
リスクアセスメントは直訳すると「危険性の調査・評価」を意味します。
労働安全衛生の分野においては、危険性の調査だけでなく、それに基づく防止策や改善措置まで含めた広い意味で用いられる言葉です。
リスクアセスメントの目的は、大きく以下の3つです。
- 転落や転倒、重機事故などの労働災害を未然に防ぐこと
- 労働安全衛生法をはじめとする法令を遵守すること
- 事故やトラブルを減らすことで作業効率を高め、生産性の向上につなげること
特に建設業は他業種に比べて労働災害が多く、安全管理は経営者や管理者にとって避けて通れない重要課題です。
リスクアセスメントのポイント
リスクアセスメントを適切に実施するためには、次の3つのことがポイントになります。
それぞれ詳しく見てみましょう。
現場の実態を正確に把握する
リスクアセスメントを行う際に最も重要なのは、机上の資料だけでなく現場の実態を正確に把握することです。
実際の作業環境や手順の中には、図面や仕様書だけでは見えないリスクが潜んでいるケースが多々あります。
例えば、足場の設置状況や重機の動線、作業員同士の距離感などは、現場を歩いて初めて気づけるポイントです。
また建設業は屋外作業が中心のため、季節や天候による作業条件の変化も見逃せません。
夏場の高温や冬場の凍結、突発的な豪雨などが事故につながることもあります。
現場を丹念に観察し、作業の流れを把握することが、リスクを正確に評価する出発点となります。
組織全体で取り組む
リスクアセスメントは、経営者や管理者だけでなく現場で働く職人を含めた組織全体で進めることが大切です。
実際に作業を行う職人の声には、机上の計画では気づきにくい実務的なリスクが反映されています。
ベテランが経験から得た知見はもちろんのこと、新人が感じる素朴な疑問も含めて幅広い意見を集めることで、思い込みを排除できます。
トップダウンで一方的に安全対策を押し付けるのではなく、現場の当事者意識が高まることで実行力も向上します。
記録と情報共有を徹底する
リスクアセスメントの実施には、データの記録と情報共有が欠かせません。
日々の作業日報や過去の事故、ヒヤリハット事例は、リスクを見える化するための貴重な情報源です。
これらを蓄積・分析することで、表面化していない潜在的なリスクの発見につながります。
さらに、1つの現場で得られた知見を他の現場や協力会社、同業他社へも展開することで、安全対策の水準を全体的に引き上げることが可能です。
AIを活用することでリスクアセスメントを効率化
従来のリスクアセスメントは、作業日報を人の目で読み解き、経験や勘をもとに判断するのが一般的でした。
しかし、この方法では膨大な分析時間がかかるうえ、評価が主観的になりやすく、大量のデータから潜在リスクを抽出することも困難な上、リアルタイムで状況を把握することもできませんでした。
そこで今注目されているのがAIの活用です。
AIなら膨大な作業データを瞬時に処理し、客観的な分析に基づいてリスクを評価できます。
過去の傾向からパターンを抽出し、潜在的な危険を早期に察知することも可能です。
そこにアラート機能を組み合わせれば、現場での事故を未然に防ぎ、効率的な安全管理を実現できます。
AIによるリスクアセスメントにはkintoneに蓄積された工事日報データの活用がおすすめ
AIを活用してリスクアセスメントを効率化するには、日々の工事日報データをどれだけ活かせるかが鍵となります。
その点でおすすめなのが、業務管理アプリ「kintone(キントーン)」です。
kintoneはノーコードでアプリを構築・カスタマイズできるため、専門知識がなくても自社の業務に合わせた仕組みを柔軟に作成できます。
操作方法もシンプルで、パソコンが苦手な方でも直感的に入力でき、スマホやタブレットからも利用できます。
さらに、kintoneはクラウドサービスなので、入力したデータはリアルタイムに共有され、経営者や管理者が即座に状況を把握できることもメリットです。
AIをはじめとする他のシステムとも連携しやすいため、工事日報をkintoneに登録してAIと連携させれば、データ収集からリスクアセスメント、報告書作成、関係者への回覧までを、ワンストップで実現できます。
kintoneの特長については、こちらの記事でも詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。
▼kintone(キントーン)とは?できること・できないことまとめ アプリの活用事例もご紹介!
kintone × AIを活用してリスクアセスメント・作業効率改善を行う手順
ここからは、実際にkintoneとAIを連携する手順について解説します。
はじめに、kintoneで「工事日報アプリ」を作成して、日々のデータを蓄積していきます。
管理する主な項目は、以下の通りです。
<工事日報アプリの項目>
- 工事名
- 担当者
- 作業日
- 天候
- 作業内容
- 作業時間
- 使用機械
- ヒヤリハット報告
- 特記事項
- 進捗状況 など
次に、工事日報を分析するためのプロンプト(AIへの指示文)を作成していきます。
プロンプトを作成する際は、出力形式を明確に指示することがポイントです。
例えば、リスクレベルや緊急性については、「高/中/低」の3段階に設定するのも良いでしょう。
また、リスク評価の根拠も出力してもらうと、人の目で見て深掘りしやすくなります。
リスク要因を抽出する際には、具体的な単語を例示するのも効果的です。
強風、異音、不安定、疲れ、気になる……といった単語は、潜在的なリスクを見つけるヒントになります。
以下は、プロンプトの一例です。
#役割 あなたは建設業界向けのデータ分析専門家です。
#指示
# ユーザー入力項目 |
工事日報の分析を実施したら、安全上のリスクや非効率な作業を抽出したうえで、対策を提案してもらうことも可能です。
以下は、特定の作業者の日報について分析した結果です。
リスクの傾向や効率化の案、リスク対策まで網羅された分析結果となっています。
あとはこれを関係者に共有し、どう活かすかを検討して現場に取り入れていくことが重要です。
AIを使ったリスクアセスメントで、安全で効率的な作業環境を実現しよう!
建設業におけるリスクアセスメントは、労働災害を防ぎ、生産性とコンプライアンスを両立させるための重要な取り組みです。
kintoneとAIを連携して活用すれば、工事日報の膨大なデータを瞬時に分析しつつ、情報共有もできます。
ツールをうまく使って、安全で効率的な作業環境を実現しましょう。
コムデックでは、建設業を含むさまざまな業種でのkintone × AI活用をまとめた事例集をご用意しております。
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