AIを活用して介護記録を分析!トラブル予防や業務の質向上につなげる仕組みとは

介護記録は、提供した介護サービスや利用者さまの健康状態などを記録する重要な書類です。
支援計画書をはじめさまざまな書類作成のもとになりますが、情報量が多いためとりまとめに苦労されている現場も多いのではないでしょうか。
膨大な紙の書類をめくって読み返したり、手作業で集計したりしていると、ただでさえ人手不足の介護現場で大きな負担になってしまいます。
そんなときにおすすめなのが、AIを活用した介護記録の分析です。
AIを活用することで作業時間を短縮し、質の高い分析が可能になります。
本記事では、介護記録をAIで分析する方法や導入事例を解説します。
この記事でわかること
- 介護記録の分析にAIを活用するメリット
- AIを活用して介護記録を分析する方法
こんな人におすすめの記事です
- 介護現場における事務作業を効率化したい方
- 介護記録を有効活用してサービスの質を向上させたい方
目次
介護記録分析にAIを活用するメリット
介護記録の分析にAIを活用する大きなメリットの一つは、作業時間の短縮です。
従来はスタッフが膨大な介護記録を1つひとつ確認して情報をまとめる必要がありましたが、AIを導入すれば数分で自動的に要約や分析が可能となります。
これにより、人手不足が深刻化する介護業界においてスタッフの負担を軽減し、離職リスクを下げることが可能です。
さらに、AIは膨大なデータをもとに客観的な判断ができることも大きなメリットです。
人間が分析する場合にはどうしても避けられない感情や思い込み、スキルの差などを排除し、均一で精度の高い分析ができます。
加えて、AIを使えば記録の中からリスクとなり得る兆候を自動で検出することも可能です。
例えば、転倒や体調悪化の可能性、さらには法令順守に関わる記録の漏れといったリスクを早期に発見でき、施設全体の安全性やコンプライアンス対応を強化できます。
kintoneに蓄積されたデータを活用することで、より詳細な分析が可能に
介護記録の管理とAI活用を進めたいときにおすすめなのが、業務管理アプリ「kintone(キントーン)」です。
kintoneは操作やカスタマイズがしやすいのが特徴で、あらゆる業種で幅広く導入されています。
医療・介護業界では、利用者情報、介護記録、面談記録、さらにはトラブル報告など多様なデータをkintone上に蓄積することが可能です。
これらの情報をAIと連携させれば、膨大な記録を瞬時に要約・分析し、その結果を再びkintoneのアプリに保存できます。
あらゆる情報を一元的に管理でき、必要なときにすぐに参照できる体制を整えられるのが特徴です。
また、kintoneはパソコンだけでなくスマホやタブレットでも利用できます。
じっくり机に向かう時間を取りにくいスタッフや、1人1台のパソコンを持たないパート・アルバイトスタッフにもおすすめのツールと言えるでしょう。
kintoneの特長については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
▼kintone(キントーン)とは?できること・できないことまとめ アプリの活用事例もご紹介!
kintone × AIを活用して介護記録を分析する手順
ここからは、具体的にkintoneとAIを連携して介護記録を分析する手順について解説します。
はじめに、介護記録の分析に必要なkintoneアプリを用意します。
アプリで管理する項目は以下の通りです。
利用者リスト:利用者さまの氏名、性別、年齢、要介護度、入所・退所日などを管理
紹介元マスタ:紹介元機関(病院、ケアマネ、地域包括支援など)のマスタ
ケア履歴:利用者さまのID、実施日、加算種別、ケア内容などを管理
次に、kintoneとAIツールを連携します。
kintoneとAIを連携する方法としては、大きく「カスタマイズ」と「プラグイン・連携サービス」の2通りがあります。
カスタマイズの場合は開発の自由度が高く、自社の業種や業務フローにフィットしたシステムを構築できるのがメリットですが、その分難易度は高くなります。
一方、プラグインや連携サービスを利用すれば、専門知識がなくても簡単に設定でき、すぐに使い始められるのがメリットです。
ただし、柔軟性には限界があり、ランニングコストが発生することもあります。
そのため、kintoneとAIの連携方法を選ぶ際は、自社のやりたいこと、担当者のスキル、かけられる時間と予算などを踏まえて判断しましょう。
kintoneとAIの連携方法について詳しくは以下の記事をご覧ください。
▼kintoneとAIを連携する方法とは?メリットと注意点も解説
kintoneとAIが連携できたら、実際に介護記録を分析するためのプロンプト(AIへの指示文)を作成します。
プロンプトを検討するために、まずはどのアプリのどの項目を分析対象とするのかを決めましょう。
また、一言で「分析」と言っても、何を知りたいかによってプロンプトは変わってきます。
例えば「ケア内容の傾向」「トラブル発生の傾向」「加算種別と収益性」などです。
以下は、プロンプトの一例です。
あなたは優良な経営状況を実現している介護施設の施設長です。 参照元データは介護施設の入退所情報やケア履歴、紹介元の情報です。 このデータから「要介護度3以上で長期利用(180日以上)しやすい利用者の傾向」を特定してください。 併せて、トラブル発生率や退所理由の傾向、営業強化すべき紹介元も含めて可視化してください。 【利用者情報】
【紹介元】
【ケア記録】
出力は以下の内容でお願いします:
|
このプロンプトで分析すると、次のような結果が出力されました。
分析結果では、「〇〇が多い」のような結論だけでなく「〇レコード中〇件」のように、判断の根拠も明確に提示してくれています。
また、今回はテキスト形式での出力を指示しましたが、パーセンテージは■■■を使った棒グラフで表現されていて、視覚的な分かりやすさも実現しています。
さらに、現状の分析だけにとどまらず、今後優先すべき対策や取り組みも提案してくれました。
kintoneとChatGPTを連携すれば介護記録に基づく資料作成も可能
kintoneとChatGPTを連携すれば、介護記録の分析からさらに一歩踏み込んで、資料作成まで自動化することが可能です。
ここでは、実際にkintoneとChatGPTを連携して介護記録に基づく資料作成を実現した事例を紹介します。
株式会社ワンセルフさまは、群馬県の高崎市と富岡市で10の介護福祉施設を運営する企業さまです。
子どもの放課後等デイサービスや大人の生活介護施設などを運営し、地域の支援が必要な方とそのご家族を支えていらっしゃいます。
以前から活動記録や面談記録にkintoneアプリを活用しており、kintone内にデータは蓄積できていました。
利用者さまのご家族と面談する際はこれらのデータをもとに資料を作成するのですが、過去のデータを見返しながら資料作成する必要があり、1人分の作成に1時間以上かかることが課題となっていました。
そこで面談資料の作成を効率化できないかと考えた株式会社ワンセルフさまでは、kintoneとChatGPTをAPIで連携し、介護記録の要約・分析の自動化を目指すことにしました。
具体的には、蓄積したデータの中から「良かったこと」「悪かったこと」「食事」などの視点で要約して、面談資料の原案を自動で作成します。
その結果、3分ほどで1人分の面談資料の原案が作成できるようになり、スタッフは内容を確認して細かい部分を調整するだけで面談資料が完成するようになりました。
これにより、株式会社ワンセルフさまでは今まで以上に利用者さまとしっかり向き合う時間が取れるようになったとのことです。
株式会社ワンセルフさまの開発事例については、こちらの記事で詳しく紹介していますのであわせてご覧ください。
▼kintoneとChatGPTを連携して介護記録に基づく資料作成を効率化|介護福祉事業 株式会社ワンセルフさまの開発事例
AI活用で介護現場の事務作業を効率化しよう!
介護現場では、利用者さまのケアに加えて、日々の記録や報告などの事務作業が大きな負担となっています。
AIを活用すれば、介護記録を瞬時に要約・分析し、必要な情報をわかりやすく整理することが可能です。
さらに、kintoneのような業務管理アプリと組み合わせれば、情報を一元的に管理でき、記録漏れや連携ミスを防ぐこともできます。
これによりスタッフは本来の介護業務に集中できるようになり、サービスの向上にもつながります。
AIを上手に取り入れながら、介護現場の事務作業を効率化していきましょう。
コムデックでは、さまざまな業種でのkintone × AI活用をまとめた事例集をご用意しております。
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