インシデント分析にAIを活用して現場の対応力・安全対策を最適化する方法を紹介

現場でインシデントが発生した時、その記録は紙やデータで残していても、「なぜ発生したのか」「どう防止するのか」といった深い分析にまで至らないケースが少なくありません。
特に中小規模の事業所では、データは蓄積されていても全社的に活用する仕組みや、分析を担う人材が不足しているのが現状です。
こうした状況に対してAIを活用すれば、再発リスクの高い要因を自動で見える化し、具体的な改善策まで導き出すことができます。
今回は、インシデント分析の目的やポイント、AIを活用することで得られる効果、そして実際にAIを活用したインシデント分析の手順を紹介します。
「インシデントのデータを活用して再発防止したい」「安全対策をより高度にしたい」という企業さまは、是非ご覧ください。
この記事でわかること
- インシデント分析の目的とポイント
- AIを活用した効率的かつ正確なインシデント分析の方法
- kintone × AIを活用してインシデント分析を行う手順
こんな人におすすめの記事です
- インシデント分析を仕組み化して再発防止を徹底したい方
- AIを取り入れて安全対策を高度化したい方
目次
インシデント分析の目的
インシデント分析の第一の目的は、発生原因や影響範囲を正確に把握し、再発防止策を策定することです。
単なる出来事の記録にとどまらず、なぜ起きたのかを体系的に整理し、現場全体のリスク管理を強化することが目的となります。
第二に、安全文化を浸透させ、作業者一人ひとりのリスク感度を高めることも重要です。
インシデントを共有し、気づきを行動改善へつなげることで組織全体で安全を守る姿勢が育ちます。
第三に、属人的な判断や経験則に依存するのではなく、標準化された分析プロセスを通じて全社的に安全対策を実行できる仕組みを確立するという目的もあります。
これにより、現場対応のばらつきを抑え、誰が対応しても一定水準の安全性が保てる体制が整います。
インシデント分析のポイント
効果的なインシデント分析を進めるには、次の3つのポイントが重要です。
1つ目は、事実と推測を明確に分けて記録することです。
曖昧な情報が混ざると原因追及が誤った方向に進み、再発防止につながらなくなるおそれがあります。
2つ目は、複数の記録を横断的に確認し、傾向やパターンを把握することです。
頻出するリスクや再発可能性の高い事象を特定し、優先度をつけて対応することで、限られたリソースを効果的に配分できます。
3つ目は、分析結果を現場担当者だけでなく経営層とも共有し、組織全体の共通認識を形成することです。
トップマネジメントが安全対策を自ら推進する姿勢を示すことで、現場の取り組みも定着しやすくなります。
これらのポイントを押さえることで、インシデント分析が単なる記録整理ではなく、組織全体で再発防止を実現するための実効性ある取り組みに変わるでしょう。
AIを活用することで効率的かつ正確なインシデント分析が可能
従来のインシデント分析は、人の手でインシデントを分類し原因究明を行っていたため、多くの時間と労力がかかっていました。
記録が増えるほど負担が重くなり、分析に十分なリソースを割けない現場も少なくありません。
そんな時AIを活用すれば、膨大な記録を自動で分類し要因を抽出できるため、人手の負担を大幅に軽減できます。
また、人間では気づきにくいデータの関連性を明らかにし、再発確率の高い要因をスコア化して優先度を提示できるため、リスクの大きさを定量的に把握し、早期に重点対策を打つことが可能です。
加えて、自然言語処理を用いることで文章ベースの報告書や日報も分析対象にでき、定型データと非構造化データを統合して扱えるようになります。
その結果、分析の幅と精度が大きく向上し、現場の安全対策に直結する示唆を導き出せます。
AIが膨大な記録を正確に分析することで、再発防止につながる改善策を明確に示せるようになり、安全対策の効果を大きく高められるのです。
kintoneにインシデントを記録することで、AIによる詳細な分析が可能に
AIを活かすには、まず基盤となるデータを整備することが欠かせません。
kintone(キントーン)を活用すれば、現場で発生したインシデントを統一したフォーマットで記録し、全社的に一元管理できます。
kintoneとは、現場に合わせて自由にアプリを作れるクラウド型の業務アプリ構築プラットフォームです。
データ基盤としての強みと、外部の生成AIサービスやプラグインと柔軟に連携できる拡張性により、kintoneはインシデント分析にAIを取り入れる土台として適しています。
実際にkintoneとAIを組み合わせると、発生日や業務内容、原因や対処といった情報をもとに、頻出リスクの抽出や共通原因の整理、改善策の提示が可能になります。
分析結果をダッシュボードで可視化すれば、現場担当者から経営層まで迅速に共有できるため、属人的な判断に依存せず組織全体で安全対策を推進可能です。
以下の記事では、kintoneでインシデント分析に活用するデータを管理する際に役立つアプリを紹介しているので、あわせてご覧ください。
▼kintoneをインシデント管理に活用!情報システム部の業務効率化に役立つアプリも紹介
kintone × AIを活用してインシデント分析を行う手順
多くの現場では、インシデント記録を残していても、その原因や再発リスクを体系的に分析するところまで踏み込めず、記録が「蓄積されるだけ」で終わってしまう課題があります。
属人的な経験や判断に依存するため、対策立案の精度にもばらつきが生じ、再発防止につながりにくいのが実態です。
この課題を解決するため、kintoneに蓄積されたインシデントに関するデータをAIに連携し、自動でインシデント分析を行う仕組みを構築しました。
AIには次のような項目で分析するようにプロンプトを設定しています。
参照データは介護現場で記録されたインシデントログの一覧です。 主なリスク傾向、原因分類、共通の改善策、優先度の高い対応項目を出力してください。出力フォーマット: 1. リスク傾向 2. 主な原因分類 3. 共通改善策 4. 優先対応項目 |
このプロンプトは、単なる記録整理ではなく「なぜ発生したのか」「どう防止するのか」を体系的に導き出す構造になっています。
人によって解釈が分かれやすい要因分析をAIが標準化された形で提示できるのが特徴です。
以下がアウトプット例です。
頻出リスクとして「誤薬」「転倒」「徘徊」などが抽出され、主な原因は「観察力不足」「手順の確認漏れ」「新人職員の経験不足」「環境整備の不備」と整理されました。
改善策としては「OJTの定期実施」「申し送り徹底」「手順書見直し」「環境チェック義務化」などが提示され、優先対応項目には教育強化やダブルチェック体制の導入が含まれています。
このように、従来は属人的に行われていた原因分析や対策立案をAIが仕組みとして再現可能にしたことで、現場対応の精度が高まり、再発防止を全社的に推進できる体制が整いました。
AIを活用したインシデント分析で安全管理を強化しよう
インシデント分析は、安全管理を強化し再発防止を徹底するために欠かせません。
人材や仕組みが不足する現場でも、AIを活用すれば潜在リスクの可視化や改善策の自動提案が可能となり、対応力を高められます。
kintoneとAIを組み合わせれば、記録を一元化し分析から改善策まで自動化できます。
これにより、属人的な判断を排除し、全社で安全対策を推進できるようになるでしょう。
コムデックでは、kintoneとAIを掛け合わせてお客さまの課題を解消する「kintone × AI 活用事例集」を提供しています。
インシデント分析以外にも現場で使える活用事例を複数紹介していますので、是非ご覧ください。