AI時代に経営者が果たすべき役割とは?台風の中約150名が集結した「コムデック万博2026」開催レポート
コムデックでは2016年から毎年、三重県伊勢市で「より良い経営とは何か」をじっくり考えていただく機会として、「コムデック万博」を開催しています。
今年も全国から経営者やIT担当者の皆様にお集まりいただき、最新のIT・AI活用や経営のヒントをお届けしました。
開催当日の2026年6月26日はあいにくの荒天となり、電車の運休や雨風の影響がある中での開催となりましたが、それにもかかわらず約150名の皆様にご来場いただきました。
今回のテーマは「AI時代の経営」。
AIが急速に普及する今だからこそ、経営者や社員はどのような役割を担うべきなのか、人にしかできない価値とは何か、中小企業がAIを競争力へ変えるために何をすべきなのか——。
各講演では、具体的な事例を交えながらお話しいただきました。
目次
コムデック万博2026開幕!式年遷宮に寄せて
コムデックが本社を構える三重県伊勢市では、20年に一度の式年遷宮に向けた準備が進められており、今年は御神木を曳く「お木曳」が行われるなど、伊勢のまち全体が次の時代へ向けた大きな節目を迎えています。
生田社長は、式年遷宮には「表八年・裏八年」という考え方があり、社殿の建て替えだけではなく、その前後を含めて16年という長い年月をかけて未来へ伝統を受け継いでいく文化があることを紹介しました。
そのうえで、「伝統を守りながら、新しい時代へ繋いでいく」という式年遷宮の考え方は、企業経営にも通じるものがあると語り、「コムデック万博も、伊勢という歴史と文化のある地から、日本全国の企業が未来の経営を考えるきっかけとなり、地域を盛り上げる一助となるイベントへ育てていきたい」と開会の挨拶を行いました。
また、「今日学んだことは、ぜひ会社へ持ち帰り、社内で共有してください」というメッセージも参加者へお伝えし、一人が学ぶだけで終わるのではなく、その気づきを組織全体へ広げ、実践につなげていただくことこそが、コムデック万博を毎年開催する目的です。
伊勢という、日本の伝統を未来へつないできた場所だからこそ、AI時代の経営や企業の未来について考える。
伊勢と言う日本の中でも特殊な地ならではの意味を感じながら、コムデック万博2026が開幕しました。

特別講演「AI時代だからこそ、人間中心の経営を」ムガマエ株式会社 岩崎剛幸氏
最初の講演では、ムガマエ株式会社 代表取締役の岩崎剛幸氏が登壇。
近年、コンサルティングの現場でも「AIをどう活用すればよいか」という相談が最も多くなった一方で、「AIを使うのはあくまで人である」という考え方を軸に、人間中心の経営について講演いただきました。

残すべき非効率が価値を生む
講演の中で繰り返し伝えられたのは、「効率化だけを追い求めるのではなく、あえて非効率を残すことが自社の付加価値・強みになる」という考え方です。
大晦日に明治神宮の授与所でアルバイトをしたという稀有な経験から、「お金を手で受け取り、お守りを手渡しする」という一見非効率な行為だからこそ、人の温かみや授与されるお守りにも価値が生まれることを紹介され、「効率だけでは企業の価値は生まれない」と語られました。
また、ドイツやポーランドを視察した経験から、「力相応一番主義」「人を大切にする文化」「教育への投資」「コミュニケーションを重視する姿勢」など、日本企業がこれから学ぶべき経営のあり方についても紹介されました。
時流適応と原理原則に立ち返ろう
講演後半では、「時流適応と原理原則」というテーマについて解説。
AIの登場により社会は大きく変化していますが、目先の流行に振り回されるのではなく、お客様に提供する価値や企業として大切にすべき考え方といった原理原則は変わらないことを強調されました。
静岡県の人気ハンバーグ店「さわやか」の事例では、「モノを売る」のではなく「体験を提供する」という原理原則に立ち返り、商品やサービスを磨き続けた結果、多くのお客様に支持され続けていることを紹介。
「変えるべきもの」と「変えてはいけないもの」を見極めることこそが、これからの経営には欠かせないと語られました。
最後に、「AIは便利なエンジンであり、その行き先を決めるナビゲーションは人間である」と締めくくり、AI時代だからこそ、感性やオリジナリティ、対話力、人とのつながりといった、人にしか生み出せない価値を磨くことの重要性を参加者へ投げかけました。
第一講座「生成AIの登場から3年 AIエージェントとともに働く社会へ」日本マイクロソフト エバンジェリスト 西脇資哲氏
続いて登壇したのは、日本マイクロソフト エバンジェリストの西脇資哲氏。昨年に引き続き、Microsoft Copilotを中心とした最新のAI活用について講演いただきました。

AIが仕事を奪う?いいえ、それは元々「人がやるべき仕事ではない」んです
生成AIの登場からわずか3年で、AIは”質問に答えるツール”から、自律的に仕事を進める「AIエージェント」へ進化しつつあります。
しかしその一方で、まだAI活用を躊躇しているという企業も少なくありません。
AIを積極的に活用している企業と全く使っていない企業では、既に大きな差が開き始めているのです。
AI活用を躊躇う理由のひとつに、「AIに仕事を奪われる」と懸念する従業員の声があります。しかし、西脇氏は「AIに代替できる仕事は、本来人がやるべきではないんです」という力強い言葉を投げかけました。
AIに仕事を任せることで、「AIに仕事を奪われる」のではなく、人はより創造的な仕事や判断に集中できるようになります。
そのため経営者が最初に行うべきことは、「社員全員がAIを使える環境を整えること」であると語られました。
社内にAI反対派が生まれることも少なくありませんが、そこについても「2〜3年したら使わざるを得なくなるから、今は放っておけばいいんです」と、そこにIT担当が時間やコストを割くことはないと断言。
とにかく経営者はAIを使える環境を社内で整え、使える人にどんどん使ってもらうことを優先してほしいと伝えました。
AIに「目的」を与えられるのは人だけ。必要なのは自社独自のナレッジ・ノウハウ
西脇氏は、「AIに詳しい人を新たに採用する必要はありません。今会社にいて、お客様や自社の業務を最も理解している社員がAIを使えるようになることが重要です」と説明しました。
これまでは人がコンピューターの操作方法を覚える必要がありましたが、AIは自然な言葉で会話できるため、難しいプロンプトを覚える時代ではなくなりました。重要なのはAIの性能ではなく、自社の仕事の進め方や判断基準といった「ナレッジ・ノウハウ」をAIへ伝えることです。
そのため、これから企業で求められるのは「仕事ができる人」ではなく、「AIへ目的を与え、適切な指示ができる人」。
ゴールまでの道筋を設計し、自社ならではのノウハウをAIへ伝えられる人材こそが、AI時代の企業を支えていくと語られました。
また、AIを定着させるためには、「とにかく毎日使うこと」「AIに完璧を求めないこと」「気になったことは何でもAIに聞くこと」が重要であり、AIを特別なツールではなく、日常的な仕事のパートナーとして活用していくことが成功への近道であると締めくくられました。
会場からは驚きの声も!Microsoft Copilotを実演
講演では、Microsoft Copilotを活用したデモも披露されました。メールやチャット、予定表、社内ファイルなどを横断して情報を検索・分析し、必要な情報を瞬時に整理する様子や、自然な会話だけでプレゼンテーション資料や動画、Q&Aまで作成する様子に、会場からは驚きの声が上がりました。
講演の最後には、「生成AIは、そろばんから電卓、インターネット、スマートフォンへと続く技術革新と同じように、もう後戻りすることはない」とし、「AIを使える人と使えない人、そしてAIを活用する企業とそうでない企業の差は、今後さらに広がっていく。まだ間に合う今こそ、一歩踏み出してほしい」というエールが参加者へ送られました。
第二講座「中小企業だからこそ実現できるAI活用」コムデック 生田社長
最後は、生田社長による毎年恒例の「いま中小企業に必要なAI・IT活用」をテーマとした講演です。

講演冒頭では、岩崎氏の「効率だけでなく、価値ある非効率を残す」という考え方を受け、コムデックのオフィスづくりやYouTube撮影などを例に挙げながら、「人と人との接点」という非効率だからこそ生まれる価値について紹介しました。
そのうえで、「2026年は中小企業にとってAI元年」と位置づけ、AIを単なる業務効率化ツールではなく、人材不足を補い、企業の競争力を高めるための重要な経営資源として活用すべきだと説明しました。
講演では、コムデックで実際に運用しているAI活用も紹介。
Claude Coworkを活用した定型業務の自動化をはじめ、営業では商談準備や商談中のアドバイス、提案資料作成、カスタマーサクセスでは顧客カルテの自動作成やチャット履歴の分析による対応漏れ防止、採用では募集要項の作成や書類選考・面接評価など、様々な業務でAIを活用している事例をお伝えしました。

さらに、介護・建設・不動産・製造業・士業など、さまざまな業種で実際に成果を上げているAI活用事例も紹介。
AIによって事務作業を大幅に削減し、その分、人にしかできない提案やコミュニケーションへ時間を使う企業が増えていることを解説しました。

講演の締めくくりでは、「AIを使える人」を育てることがゴールではなく、「AIを使って成果を再現できる組織」をつくることが重要だと強調。個人の経験や勘に頼るのではなく、社内に蓄積されたノウハウやルール、商談記録や顧客情報などの独自データを組織知としてAIに活用させることで、誰が担当しても一定以上の成果を出せる企業へ進化していくことが、これからの中小企業に求められる姿であると締めくくりました。
なお、本講演でご紹介した具体的なAI活用事例や、「AIを使って成果を再現できる組織」の考え方については、後日別の記事で詳しくご紹介する予定です!
学びを共有し、新たな気づきを得る「気づきタイム」
各講演の後には、コムデック万博恒例となっている「気づきタイム」を実施し、参加者同士で講演の感想や印象に残ったこと、自社で取り組んでみたいことなどを共有し、一人で聞くだけでは得られない新たな視点を持ち帰っていただきました。
今年のテーマであったAI活用についても、
- 「まずは社内全員がAIを使える環境を整えたい」
- 「AIに任せる仕事と、人が担うべき仕事を整理したい」
- 「社内のナレッジをAIに活用させる仕組みを考えたい」
など、早速自社での取り組みについて活発な意見交換が行われていました。
コムデック万博では、「聞いて終わり」ではなく、学んだことをアウトプットすることで理解を深め、会社へ持ち帰って実践につなげていただくことを大切にしています。

休憩時間も学びが満載!コムデック社員が2つのミニセミナーを開催
講演の合間の休憩時間には、コムデックメンバーによる2本のミニセミナーを開催しました。
「講演だけで終わらず、すぐに実践できる情報を持ち帰っていただきたい」という想いから、実際のお客様からご相談の多いテーマに絞って、最新の活用事例をご紹介しました。

AIで変わるkintone活用 ― kintoneに集まったデータをAI活用する
ミニセミナー第一弾は、「AIで変わるkintone活用」をテーマに、AI時代のkintone活用についてご紹介しました。
LINE WORKSから自然な会話でkintoneを検索・登録できるAI連携や、チャット履歴から対応漏れをAIが検知する仕組み、電話の文字起こし・AI要約、マネーフォワード クラウド会計との連携によるリアルタイム管理会計、そしてClaude Coworkを活用した業務自動化まで、実際の導入事例を交えながらご紹介しました。

共通してお伝えしたのは、「AIを導入すること」が目的ではなく、kintoneに蓄積されたデータを活用することで、検索・入力・集計といった日々の業務をAIへ任せ、人はより価値の高い判断や提案に集中できる環境を作ることの重要性です。
「西脇さんのセミナーの秘密」AIが活躍するための土台づくり
ミニセミナー第二段は、「西脇さんのセミナーの秘密」と題し、第一講座で披露されたMicrosoft Copilotのデモが、なぜあれほど自然に動いていたのかを解説しました。
その答えは、AIの性能だけではなく、「メール・ファイル・チャット・予定表などのデータがMicrosoft 365に集約されていること」にあります。
どれほど高性能なAIでも、社内の情報がバラバラに管理されていては十分な力を発揮できません。
Microsoft 365やGoogle Workspaceなど、AIから見える場所にデータを集約することが、AI活用の第一歩であることをお伝えしました。

AIツールを導入する前に、「AIが働ける環境」を整えること。その重要性を、多くの参加者の皆様にお持ち帰りいただけたミニセミナーとなりました。
講演だけでなく、このような実践的なミニセミナーも、コムデック万博ならではの見どころの一つです。
懇親会で交流から新たな取り組みのきっかけを見つけよう
セミナー終了後には毎年ご好評いただいている懇親会を開催しました。
会社や業種の垣根を越え、多くの経営者・IT担当者の皆様が交流し、講演内容をきっかけとした情報交換や、自社のAI活用・DX推進について活発な会話が繰り広げられました。
講師の皆様にもご参加いただき、講演では聞けなかった内容について直接質問される姿も多く見られ、終始賑やかな雰囲気となりました。
毎年、「懇親会での出会いが新しい取り組みにつながった」というお声をいただいており、コムデック万博ならではの貴重な交流の場となっています。

翌日はコムデックオフィスツアーを開催!効率化と非効率が融合するオフィスをご紹介
コムデック万博翌日には、希望者を対象にコムデックオフィスツアーを開催しました。
オフィスツアーでは、前日の岩崎氏の講演でもテーマとなった「効率化と非効率」が融合したオフィスを見学しながらご紹介しました。
例えば、オフィス内に設置されたブランコは、一見すると業務効率とは関係のない「非効率」な設備です。
しかし、お客様がいらっしゃったときの偶発的なコミュニケーションが生まれたり、社員にとって自社のシンボルとなっていたり、人と人とのつながりを生み出す大切な役割を担っています。
一方で、日々の定型業務についてはAIやkintone、クラウドPBXを活用して徹底的に効率化。
実際にコムデックが使っているツールや設備をご覧いただくことで、多くの参加者の皆様に「自社でも取り入れられそう」という具体的なイメージを持っていただける機会となりました。

AI時代だからこそ、人が果たすべき役割を考える一日に
今年のコムデック万博2026では、「AI時代に経営者が果たすべき役割とは?」をテーマに、3名の講師それぞれの立場からこれからの経営についてお話しいただきました。
岩崎氏からは、「効率化だけでは企業の価値は生まれない」「時流に適応しながらも原理原則を大切にする」という、人間中心の経営について。
西脇氏からは、「AIはもう後戻りできない技術であり、まずは社員全員がAIを使える環境を整えることが経営者の役割である」という、AI時代の組織づくりと、革新的なAIエージェントの活用について。
そして生田社長からは、「AIを使える人を育てる」のではなく、「AIを使って成果を再現できる組織」をつくることが、これからの中小企業の競争力につながるという考え方をお伝えしました。
AIは今後さらに進化し、企業経営に欠かせない存在となっていきます。
しかし、そのAIにどのような目的を与え、どのような価値を生み出すのかを決めるのは、これからも人間です。
伊勢という、日本の伝統を未来へつないできた地で開催したコムデック万博2026。
伝統を守りながら新しい時代へ挑戦するという式年遷宮の考え方にも重なるように、「変えるべきもの」と「変えてはいけないもの」を見つめ直し、多くの企業がAI時代への新たな一歩を踏み出すきっかけとなる一日になったのではないでしょうか。
ご参加いただいた皆様、そして台風による悪天候の中、ご来場いただいた皆様に心より感謝申し上げます。
コムデックではこれからも、「伊勢からITで日本を元気にする」という理念のもと、中小企業の皆様がAI・ITを活用し、自律的に成長し続けられるよう支援してまいります。
また来年のコムデック万博で、皆様とお会いできることを楽しみにしております。









