経営品質向上への道のり第四話「マクロ環境の変化を考える」

マクロ変化の考察はPEST分析から

経営品質の申請書は、ガイドラインに基づき記載すべき事項がいくつかのセクションに分かれています。
各セクションは指定された分量があり、実際には、これまで主に討議してきた内容は初めの10ページの内容で、全体の20%にすぎません。
自社の歴史、強み、ビジネスモデルは、審査員が我々の組織を理解するための自己紹介といえます。そして、自社の理想とする姿は、後の申請内容の基礎となり、経営品質の思考の核心となります。
先はまだ長いですが、現状と理想とする姿をしっかりと時間をかけて整理し、明確に表現することは、その後の内容を検討する上で重要です。
そこで今回は、「自社の経営に関わるマクロ環境分析の整理と明確化」に焦点を当て、検討を進めました。

PEST分析の宿題担当の生田社長の回答に討議を加えた結果、コムデックに影響のあるマクロ環境の変化は主に以下の4つであることがわかってきました。

生産年齢人口の減少
県内企業のデジタル化の進捗率の低さ
ノーコード･ローコードツールの登場
マーケティングの民主化

PEST分とは、外部環境を 4つの分野である政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の要因に分類し、自社に与える影響を読み解く分析手法です。

生産年齢人口の減少(人口減少で結婚できない!?)

少子高齢化問題に加えて三重県では、未婚の20～49歳の男女比率が1.39:1となり、結婚機会の減少による将来の人口減少加速が予測されています。
若年者人口の県外流出も大きな課題であり、これらは地域社会に大きな影響を及ぼし、企業の事業継続にすら困難にする課題と言えます。
自社においても地域での人材確保が難しくなりつつあるため、リモートワークによる地域外での採用やコア業務以外の外注化を加速させています。

出典)三重県HP

県内企業のデジタル化の進捗率の低さ

三重県内企業の経営者のうち 53.6%がICTに苦手意識を持つ 60 代以上となっている影響からか、県内企業のICT導入が全国に比べて遅れていることも自社にとって影響のある環境変化です。
令和元年度の三重県調査によると、9割以上の企業がまだこれからICT導入を行っていく段階にあるという絶望的に遅れている現実が見えてきました。
全国的にも後継者難による廃業やM&Aの増加による企業数の減少に加え、前項の人口減少問題と併せて考えると、従来の商圏である三重県中南勢部から商圏の拡大を行うことが急務であると考えられます。

出典)三重県HP

ノーコード･ローコードツールの登場(kintone等)

経済産業省「DXレポート」に記されているように、IT企業は工数算出の受託型ビジネスを脱却し、顧客と直接対話しながらITの活用度や得られた成果に対して報酬を得るビジネスモデルへの転換が求められています。
ノーコード･ローコードツールは、顧客と直接対話しながらIT化を推進するのに適したツールで、インターネット環境があればシステム開発、提供、サポートが可能です。
しかし、提供地域や企業に制限がなく、参入障壁が低いため、副業を持つ個人でも参入可能であり、競争は激化しています。
ノーコード･ローコードツールは、地方の中小IT企業にとって、縮小している地域経済から全国へと商圏を広げる効果的な手段ですが、従来のプログラム開発と異なり、取引業者を変更するスイッチングコストが低いため、継続的な情報発信、ブランディングによる差別化、そして顧客理解に基づいた関係づくりが重要となります。

資料)経済産業省 DXレポート2.2　概要

マーケティングの民主化(中小企業の福音)

大げさな表現ですが、「マーケティングの民主化」も自社に大きな影響を与えるマクロ環境の変化と言えます。
従来のアナログ広告(TVや紙媒体広告、DM)を使ったマーケティングは、高コストで、効果判定が難しく、マーケティング専門家が不在である中小企業では効果的な取り組みが困難でした。
デジタル広告(従来のウェブサイトやメール、SNSや動画配信)の分野では、安価なコンテンツ管理ツールの登場に加え、画像や動画編集がスマートフォンで可能になるほど一般的となったことで、大企業だけでなく中小企業の専門外の社員自らがコンテンツを作成し、効果測定と改善を行いながら、効果的なマーケティングが実施できるようになりました。
365日24時間稼働可能なデジタル広告は中小企業の営業力を拡大し、更にはWeb会議ツールやアクセス分析ツールの活用によって営業活動全般のデジタル化によって生産性改善に大きな効果が生まれています。