> 対談一覧 > 第11話『焼きそばパンは答えではない』
うわべだけ真似する人はどの世界にもいる
安田知能ではAIに勝てないですよね。
基本的にはそうですね。知能はAIになると思います。
生田
安田昔は人間が指示した通りに機械が動いてましたけど。知能と労働が逆転しちゃった感じですか。
その知能に対して、新たな価値につながる「問いかけ」ができるのが人間ですね。
生田
安田問いかけ?たとえばどのような。
そこに答えはないんですよ。「自分たちって何者なんだろう?」とか「どういうものを後世に残したいのか?」というバックボーンによって、問いが変わってくる。
生田
安田難しいですね。
この問いができる人間になるには感性が必要です。すなわち文化とか教養とか地域の歴史とかをわかっている人間がAIに問いかける。
生田
安田問いかけるとどうなるんですか。
問いかけると AIが答えを返してくる。いま流行りのチャットGPTみたいに。
生田
安田チャットGPTって凄いんですか?
凄いですよ。なんでも答えてくるので。
生田
安田じゃあ答えはもうAIに任せれば間違いないと。
答えを出すのはAIだけど、出てくる答えは問いによって違うということです。
生田
安田なるほど。いい答えを得るにはいい問いが必要なんですね。
問いに良いも悪いもないんですよ。
生田
安田え!ないんですか。
問いに対する答えには良し悪しがあるけど。問いに良し悪しはないです。
生田
安田お金になる問いとか。
たとえば「上がる株を予想してくれ」とか、そういう問いはもうAIが勝手にやってしまうわけです。
生田
安田良し悪しがない問いだから人間にしかできないってことですか。
そうです。ものすごく早すぎるものとか。
生田
安田早すぎる?
あまりにも今の流行から先に行ってるものって、売れるかどうか分からないじゃないですか。
生田
安田予想できる範囲ならAIがやってしまうと。
そうなんです。
生田
安田つまり「何をやるべきなのか」というより、「何をやりたいか」というような根源的な問いですね。
そう。現時点ではそこは人間が考えていくしかない。
生田
安田人間の役割があって良かったです(笑)
AIが候補をつくることは出来ます。たとえばAIが絵を描いたり音楽をつくったり。
生田
安田AIがつくった絵や音楽の中から「これがいい」というものを人間が決めると。
AIが作ったベースを人間がアレンジするとか。
生田
安田人間がゼロから作るアートは無くなるんですか。
なくならないと思います。どちらが売れるかは分かりませんけど。
生田
安田AIが描いた絵と人間の画家が描いた絵を、普通の人は見分けられるんでしょうか。
たぶん99.9%の人は見分けがつかないと思います。
生田
安田ですよね。マーケットで買うのはそういう人たちですから。
そうなんです
生田
安田ということは「売れるものを作ろう」ということ自体に意味がないと。
お金という解像度で考えるとテクノロジーには勝てないと思います。
生田
安田株や為替みたいなお金を増やすゲームでは、もう人間は勝てないですよね。
勝てるとしたら「信用」でしょうね。
生田
安田信用ですか。
信用もしくはコミュニティ。コミュニティの中核にあるのは共同幻想じゃないですか。
生田
安田共同幻想?
コミュニティの参加者全員が「価値がある」と信じているものですね。
生田
安田なるほど。
基本的に「算数できるものは絶対にAIには勝てないよ」というのが明確になったということです。
生田
安田信用は算数できませんか。
算数できない信用が「どこにあるんだろう」って考えることが大事。焼きそばパンは算数できない価値じゃないですか。
生田
安田例の焼きそばパンですか。ビュッフェの時間が終わった後に賄い食で作ってあげる。
そう。焼きそばパンを提供されたお客様がホテルのファンになるかもしれない。そのコミュニティのファンになるかもしれない。
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生田
安田かもしれないってことは、ファンになるかどうか分からないってことですよね。
分からないですね。人間の心の問題なので。計算できないんです。
生田
安田「ウチもビュッフェの時間が終わったら焼きそばパンを出すぞ」と真似しても、うまくいかないと。
うまくいかない。焼きそばパンは答えじゃないから。
生田
安田全体を見ずに部分だけ真似する人って多いですよね。
うわべだけ真似する人はどの世界にもいます。
生田
安田焼きそばパンは象徴ではあるけれど、答えではないということですね。
そうです。だからAIにはできない。
生田
安田「もしかしたら喜んでくれるかも」と想像することが人間の価値なんでしょうか。
人を幸せにできるのは人だけなのかもしれません。
生田
安田深いですね。
そこには人間味とか、その人のアドリブとか、「伊勢だから」とか、計算できない不確定な要素が必要だと思うんですよ。
生田
安田伊勢だから?
たとえば「あの人は京都出身だから、おそらくこういう景色が好きだろうな」とか。「ちょっと薄味にしておいてあげたほうが喜ぶだろうな」とか。
生田
安田なるほど。
それって京都のことを知ってるとか、その人を思いやるとか、いろいろ複合的じゃないですか。
生田
安田思いやりって複合的なんですね。
複合的で複雑系なんです。
生田
安田そのためには教養なり文化なりを背景にした感性が必要ってことですね。
それがないと出来ない行為です。
生田
安田もしかしたら会社や資本主義が生まれる前のほうが、人間って感性が豊かだったのかもしれないですね。
それは間違いないでしょう。
生田