> 対談一覧 > 第7話『みんな名前を奪われている』
消費者は”ストーリー”を買っている
地方にも絞り込んだお店って出てきてるんですよ。
生田
安田たとえば?
街のパン屋がクロワッサンしかつくらなくなって、いつの間にか全国から人が買いに来たり。
生田
安田分かります。
そういうのはポツポツ出てきてる。
生田
安田2023年は脱コロナも見えてきたし。みんなで頑張っていきたいですよね。
そうなんです。だけど新しいことをやるんだったら、いままでの延長線上で「効率良くがむしゃらに頑張る」のは辞めたほうがいい。
生田
安田もうそっちは無理っぽいですよね。
とことん大きくしないと無理です。中小企業は「ちょっと違ったやり方」とか「違ったマーケット」とか「尖った売り方」とか、そういうことをやったほうがいい。
生田
安田私も同感です。だけど間違った尖らせ方をする人が多くて。
それはどんな?
生田
安田たとえばさっきのクロワッサンの話ですけど。「クロワッサンが大好きで、クロワッサンだけつくりたい」みたいな人がクロワッサン専門店をつくるのはいいんです。
ですよね。
生田
安田だけどそういうお店がヒットすると、「あ、クロワッサン専門店が儲かるのか」って、安易に真似しちゃう人が多くて。
分かります。高級食パンとかそうですよね。
生田
安田そうなんですよ。高級食パンも一斉に流行って、一斉に売れなくなったじゃないですか。
あれは「間違った尖らせ方」ということですね。
生田
安田はい。頭で考えて、「どうやら、こういう絞り込みをしたらお客さんが増えるらしいぞ」というやり方は前時代のやり方というか。デジタル化と変わらない気がします。
そこで大事にするべきは地元の人だと思いますね。
生田
安田地元の人ですか。
はい。地元のずっと来店してくれる人。
生田
安田つまり目の前にいる、いまのお客さんを大事にするということですね。
そうです。たとえばECとかをバキバキにやって、そっちにぜんぶ体重を乗せてやったら、結局コモディティ化の話になっちゃう。
生田
安田なるほど。なっちゃいますね。真似しやすくなるし。
「1日〇〇個限定のクロワッサンはここでしか買えません」とか。クロワッサンについてお客様にすごく熱い説明を届けるとか。オフラインを徹底的にがんばる。
生田
安田消費者が何を買っているかというと、クロワッサンを買っているようで、クロワッサンじゃないですもんね。
そのとおりだと思います。「クロワッサンが好きで好きでしょうがなくて、めちゃくちゃこだわってクロワッサンをつくっている」という、ストーリーが商品。
生田
安田単にクロワッサンの味とかじゃないということですよね。
違うんですよ。もちろん味も大事なんですけど、応援してもらっている関係になっているということ。「クロワッサン+その人」という世界観が支持されてる。
生田
安田そうなってくると計算ではないですよね。その人の感覚とか世界観みたいなものが価値なので。
だから「感性を磨こう」ということで、このメディアを立ち上げたわけですよ。
生田
安田なるほど。
情報に関しては属人化しちゃだめなんです。
生田
安田情報は属人化しちゃだめ?
はい。情報格差はいらないんです。ITを使ってみんなに最新の情報を届ければいいし、情報格差なしで働くというのが理想なんです。けどここではき違えちゃいけない。
生田
安田はい。
情報は属人化しちゃいけないんですけど、「この人じゃなきゃだめ」という、お客さんからの頼られ方としての属人化はしていったほうがいい。していかなきゃダメ。
生田
安田なるほど。でもそれって会社にとってはリスクですよね。
そうなんです。うちの会社も「こいつに辞められたら困る」みたいな感じなので「スタッフ一人ひとりを薄めよう」と思ったときもあります。
生田
安田そうしないと組織として機能しないじゃないですか。「この人がいなくなったら仕事が止まる」みたいなのは会社として非常にまずいですよ。
まずいです。まずいんですけど、その人が「居たい」と思えるようなプラットフォームにしておかないとダメなんです。
生田
安田あえてリスクの高い人をつくって、辞めないようにすると。
ONE PIECEでも、ゾロはゾロだし、サンジはサンジだし。
生田
安田たしかに。
彼らが麦わら海賊団から抜けちゃったら、ルフィーはすごく痛手だと思うんです。けど「ゾロ、おまえあんまり目立つなよ」って絶対ルフィーは言わないじゃないですか。
生田
安田「替えがきくゾロ」では意味がないということですね。
意味がないんですよ。
生田
安田なるほど。
パン屋の話でいうと、店主がひとり親方で「クロワッサン」プラス「店主」というところで支持される存在になればいいんですけど。
生田
安田はい。
中小企業も最初は社長がそういう形で。集客もファン化も採用も、ぜんぶ社長の力でやっていくことが必要だと思うんです。
【ファン化に関するサービスについてはこちら】
生田
安田ですね。
けど会社が大きくなってくると、従業員もそういう形にならなくちゃいけなくて。
生田
安田替えが効かない存在にならなくちゃいけないと。
それがインセンティブにもなると思うんですよ。お金だけじゃなくて、うちの会社で仕事をしていたら「こういう存在になれるよ」って。とくに若い子たちには響くと思う。
生田
安田わかります。生活できないほど給料が安いとだめだけど。やっぱり仕事そのものを楽しめないとハッピーじゃないですよね。
「俺がやった仕事」「俺じゃなきゃいけない仕事」って、絶対に承認欲求として大事だと思っていて。
生田
安田間違いないです。
だけど多くの会社は「千と千尋の神隠し」みたいに、従業員の名前を奪っちゃってるんですよ。
生田
安田なるほど。たしかに。「〇〇課所属の営業マン」ですからね。
「コムデック」という船の上でゾロだったりサンジだったりナミだったり。ひとりひとりの役割が輝くようにしていかないと駄目だなと。
生田
安田ワンピースはそれぞれが別の役割ですけど、同じ職種の場合はどうするんですか。
たとえばkintone構築なら、「サタさんがやったkintone構築」みたいな形にしたい。そうなれば同質化・コモディティ化と違う路線で戦えるし。
生田
安田じゃあ生田さんは拡大じゃなく属人化に向かうということですね。
はい。属人化に向かいます。アイドルビジネスのように属人化していきたいです。
生田