> 対談一覧 > 第25話『良いムダと悪いムダ』
いいムダと悪いムダの境目
安田「ムダなことはよくない」という時代が長かったじゃないですか。
はいはい。
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生田
安田できるだけムダをなくす。「ムリ・ムダ・ムラをなくそう」みたいな標語があって。
できるだけムダをなくす。「ムリ・ムダ・ムラをなくそう」みたいな標語があって。
生田
安田それでムダを削った結果、独自の価値までなくなっちゃって。
価格競争でどんどん儲からなくなってます。
前にも言いましたけど、いいホテルほどムダなものがあったりするんです。ムダなプロセスというか。
生田
安田便利すぎると逆に安っぽくなるんですかね。
そう思います。
生田
安田車をわざわざ駐車場まで持っていくバトラーとか。自分で駐めたほうが早いですけど(笑)
経済的に価値のあるムダってありますよ。無意味なムダもありますけど。
生田
安田その境目ってどの辺りにあると思いますか?
「機能」と「意味」の間にあると思います。
生田
安田機能と意味?
ホテルの話でいうと、寝るだけだったら「安くて、駅直結で、フロントと部屋が近くてコンパクトで、枕元に充電ケーブルがぶら下がってりゃ」いいんです。
生田
安田合理的な人が選びそうなホテルですね(笑)
機能だけを考えたらそうなるんですよ。
生田
安田「どうせ寝るだけだし、朝も早いし、駅から近いほうが仕事には便利だろ」っていう。
マンダリンホテルなんて超不便ですよ(笑)
生田
安田駅から遠いし。フロントから自分の部屋に行くのも面倒だし。
そうなんですよ。しかも1泊15万ですからね。
生田
安田1泊15万!寝るだけだともったいない(笑)
実際には数時間しかいませんからね。
生田
安田ですよね。
だけどそれはムダじゃないと思ってます。
生田
安田何をもってムダじゃないと感じるんですか。
ムダだと思っている経営者のほうが圧倒的に多いですよ。
機能的には、まあ、つじつま合ってねーなとは思います。
生田
安田ですよね。
機能を求めるならばトヨタでいいわけですよ。ベンツやBMWは壊れやすいし、修理費用はめっちゃ高いし。
生田
安田いいところなしですね(笑)
機能でいうと当然トヨタよりも劣っている。にもかかわらず値段が高い。
生田
安田それはなぜですか?
なぜ高くできるかっていうと、値段を決めているのが客じゃないから。
メーカーが自分たちで売値を決めてるんですよ。
生田
安田トヨタは違うんですか?
トヨタは客に決めさせられているんですよ。「日産以上BMW以下だからこれぐらいの値段ですよね」って。
生田
安田BMWより高いと売れないってことですか。
売れないと思いませんか?
生田
安田ベンツより高いんだったらベンツを買っちゃうでしょうね。
そうなんですよ。
生田
安田機能だけでは高くできないってことですか。
圧倒的に機能が優れてたら上げれると思います。けど機能と価格って綿密に連動しているので。
市場や顧客がそこに介入してくるわけです。
生田
安田どういう意味ですか。
たとえばホテルを探すときに「駅から何分。部屋の広さはこれぐらい。朝食が付いている」みたいな機能は比較できるんですよ。
生田
安田実際みんな比較しますよね。
比較して「この機能が付いてる割に安い」という選び方になる。つまり費用対効果で選ばれるわけです。
生田
安田なるほど。機能と価格はセットだと。
そうです。だから「いいムダと悪いムダ」という話でいくと、機能のムダはダメなんですよ。
生田
安田余計な機能を付けても費用対効果が悪いと買ってもらえない。
そういうことですね。そのムダが吉と出るか凶と出るか。
ここをちゃんと考えないと意味のないムダになってしまいます。
生田
安田出張で1泊15万のホテルに泊まるって、ある意味すごくムダだと思うんですけど。
これが吉と出る可能性もあるんですか。
僕のなかで吉と出るのは分かっているので。
生田
安田え!分かってるんですか。
はい。勉強であり投資です。ラグジュアリーホテルとビジネスホテルの違いを肌で感じる。
kintone事業にその価値を組み込む。そこが今後の大きなポイントになってきます。
生田
安田kintone事業の中にラグジュアリーホテルの価値を組み込む?すごく難しそうですね。
簡単ではないと思ってます。だからこそ他社は真似ができないし、価格に反映できる価値が生まれてくる。
生田
安田多くの中小企業にとっての課題ですね。難しいけど越えなくちゃいけない壁というか。
そこを越えられないと安売りで身を削っていくしかない。どこかで行き詰まってしまいます。
生田
安田なるほど。そのためにはラグジュアリーホテルに泊まることもムダではないと。
単なる機能ではない価値を学ぶには、そういう体験は大事だと思います。
生田
安田体験してその価値を実感されましたか。
結局、機能は「便利だった」という記憶が残るだけなんです。
でも意味のある体験というのは「思い出」がついてくる。
生田
安田確かに。思い出に残りますね。
機能だけを追求していくと、どんどん人を介さなくなると思うんです。
生田
安田ビジネスホテルのチェックイン・チェックアウトはその方向ですね。
カードを入れて「ピッ」で終わっちゃう。
人を介して丁寧に接客すると当然ムダも発生しますし。イレギュラーもあります。
でもそこでしか意味や思い出は生み出せない。
生田
安田チェックインにめちゃくちゃ時間がかかるのは嫌ですけど。
ラグジュアリーホテルでカードを入れて「ピッ」で終わるのも嫌ですよね。
思い出作りの旅行には物足りないですよ。ただそのほうが1秒でも早く部屋には行ける。
生田
安田行けますね。ラグジュアリーホテルはエレベーターまで遠かったりするし。
そうなんです。だけどその遠回りにまた意味があるわけですよ。
生田
安田機能性は劣るけど意味のあるムダですね。
機能を追求するのか意味を追求するのか。「このビジネスはどっちでいくのか」ってことを経営者が正しく判断しないと。
ただの大量生産安売りになっちゃう。
生田
安田その判断が一番重要ですね。
いいムダと悪いムダの境目はそこにあると思います。その境目を見極めるのは経営者しかない。
そのための体験は決してムダにはならないですよ。
生田