> 対談一覧 > 第171回「美術館や博物館に収入目標は必要か?」
ルーブルに学ぶ、美術館経営の未来
安田日本の国立博物館・美術館ってすごい赤字だそうで。
「収入目標をしっかり持たせよう」という議論が進んでいまして。
収益化しようと。
生田
安田そう。黒字化出来る博物館や美術館だけを残していこうと。
アーティストは大反対みたいですけど。どう思いますか?
なぜ反対してるんですか?
生田
安田そもそも美術館って、貴族が持っていた貴重品を国家の財産として引き継いで保管することが始まりみたいで。
ヨーロッパの貴族ならすごい数の作品や絵画を収集してそうですね。
生田
安田そうなんですよ。それが革命によって国民のものになって。
国としての大切な財産だから家ごと美術館にしてしまおうと。国民は誰でも自由に見ることが出来て。
なるほど。それが始まりなんですね。
生田
安田はい。そもそも美術館は収益目的で作られているわけではなく。
絵が好きな人とか若いアーティストがゆっくり見学して、毎日通い続けることが出来る場所らしいです。
僕も2月にスペインのプラド美術館に行きましたけど、ものすごい作品が並んでましたね。
生田
安田ピカソもありますよね。ゲルニカとか。
それを一般の人が簡単に見ることができる。それが国家としての役割というか。
元々が貴族の建物で美術品も譲り受けて運営してるわけですから、あまり固定費はかからなさそうですけどね。
生田
安田ヨーロッパの美術館はそうなんです。
でも日本の場合は欧米列強に追いつくために作っている部分もあって。
なるほど。
生田
安田日本古来の浮世絵とかもみんな海外に流れてしまって。
美術館ありきでスタートしているというか。
絵の修復や維持にもお金がかかりますしね。
生田
安田そうなんですよ。
だから日本の場合はわざわざ海外から有名な絵を借りて、イベントをやって集客しているそうです。
本来の目的とはぜんぜん違いますね。
生田
安田とはいえ美術館や博物館をすべて無くすわけにもいかないし。
健全な赤字がないと国は発展しないですからね。
生田
安田生田さんは経営者だから美術館も「黒字を目指せ」と言いそうですけど。
いや、僕はそんなことはないですよ。
たとえ赤字でも海外から人を引きつけるとか。観光業全体が潤うならぜんぜんOKです。
生田
安田日本の美術館って海外から作品を借りて「ピカソ展」「ダリ展」みたいな集客をしていまして。
日本人は観に来ますけど海外の人がわざわざ来ますかね。
それは確かに弱点ですね。そもそも日本中に散らばりすぎてるんじゃないですか。
集中と統合は経営の観点でも必要なのでいい作品をどこかに集めてくるとか。
生田
安田確かにどの美術館も中途半端な感じはあります。
スペインのプラドやフランスのルーブルは規模がぜんぜん違う。
なんでもそうだと思うんですけど集まれば強いですよ。
生田
安田日本中の作品を集めてルーブル並みの美術館を作ると。
月島の「もんじゃストリート」もそうやって人を集めてるじゃないですか。
観光客だらけですよね。
生田
安田確かに。
しかも、どこも高いですよね。
集まれば集客力が備わって価格も上がるし、大繁盛ってことなんですよ。
生田
安田美術館も1箇所に集めれば職員の報酬も高くなって採用力もアップすると。
そういう工夫はまだまだ出来る余地があると思います。
日本唯一の美術館とか博物館なら寄付金も増えるでしょうし。
生田
安田人材育成という意味ではどうですか。
図書館みたいに地域ごとに必要ではないですか。
どうなんでしょうね。たとえば図書館の適正な数ってどれくらいなのか。
人口が増えていた時のまま何となく運営されている気もしますけど。
生田
安田確かに。
今は人口も減ってますし、時代の変化に合わせてやっていくべきだと思います。
生田
安田この先人口がどんどん減っていくことは確実ですし。
そもそも人がバラバラに暮らすことが無理なのかもしれませんね。
これが商業だったら当たり前の話なんですけど。
レンタルビデオ屋さんも淘汰されてるわけじゃないですか。町の本屋も淘汰されてるわけじゃないですか。
生田
安田確かに。
それなのに小さな図書館や美術館は永遠にありますってのは、ちょっとおかしいですよ。
生田
安田言われてみればそうですね。
数を減らすとか統合して強くしていくとかは必須じゃないですか。
どうしても地元で支えていきたいのであれば、寄付やクラウドファンディングでお金を集めないと。
生田
安田厳しい時代ですからね。何らかの工夫をしないと生き残れない。
どの業界も同じですね。
残していきたいのであれば知恵を出さなきゃダメですよ。
ただ「残して欲しい」は現実的ではないです。
生田
安田税金もこれ以上上げられないし。確かに知恵が必要ですね。