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Conversation対談

2025.11.03

第143回「7,000円のトンカツが売れまくるワケ」

テーマ「デジタル化の次に来るもの」

高価格でも選ばれる“ブランド化”の極意

  • 安田

    大阪万博に小さなトンカツ屋さんが出店してるんですけど。
    なんと7,000円のトンカツがめちゃくちゃ売れているみたいです。

  • どんな人がやってるんですか?

    生田
  • 安田

    シェフは元々イタリアンのレストランをやっていた人で。
    コロナ禍で倒産しちゃったそうです。
    借金を1,500万円も背負い、子供も学校に行かせられない状況から復活した。

  • それはすごい。コロナ禍の時は飲食がたくさん潰れましたから。

    生田
  • 安田

    この方は奥さんも飲食で働いていたみたいで。
    家族全員が失業してもう自己破産しかないという状況だったみたいです。

  • そこからV字回復したと。

    生田
  • 安田

    そうなんです。子供が「どうせ自己破産するんだったら、最後にやりたいことやりなよ」と言ったらしくて。

  • 凄い子供ですね。

    生田
  • 安田

    それで決心がついたと。ずっと「超こだわりのとんかつ屋」をやりたかったそうです。

  • いいですね。コンセプトが面白い。

    生田
  • 安田

    お金がないから裏路地のボロボロの店舗ではじめて。
    それが大成功したので万博に個人出展したらまたしても大成功して。

  • 万博って個人で出店できるんですね。

    生田
  • 安田

    銀行にも大反対されたそうです。でも大繁盛で。
    なんと月商2,700万円。年商3億円を個人店でやってる。

  • 凄いですね。どんなトンカツなんですか?

    生田
  • 安田

    全国銘柄豚のこだわりの部位だけを仕入れて、部位ごとに衣や上げ温度を変えて、いちばん美味しい状態で提供する。
    フランス料理みたいにコースで6〜7品提供するそうです。

  • 究極のとんかつですね。それは食べてみたくなります。

    生田
  • 安田

    トンカツだけのランチコースでなんと7,000円。それが予約だけで満席になるそうです。
    7,000円でも食べたいですか?

  • こういうのは高ければ高いほどいいんですよ。賛否が分かれそうですけど実際そうなんです。
    だって「7,000円のとんかつ」ってだけで食べてみたくなるじゃないですか。

    生田
  • 安田

    確かに。どんなトンカツなんだろうって思いますよね。

  • 以前お話したフェラーリとかフィレンツェの靴屋と一緒ですよ。共通項はグローバルニッチ。

    生田
  • 安田

    グローバルニッチ?とんかつが?

  • そうです。僕らにとってトンカツはお母さんが揚げてくれる一般家庭の強い味方ですけど。

    生田
  • 安田

    普通にスーパーでも買えますからね。お惣菜として。

  • 日本人にとってはポピュラーな食べ物ですけど、万博に出店されたこの7,000円のとんかつはグローバルニッチなんですよ。

    生田
  • 安田

    なるほど。違うものに見えていると。

  • 万博には世界中から人が来るわけで。
    「めちゃくちゃ美味い食べ物やん」「こだわりすごいやん」ってなるわけです。

    生田
  • 安田

    まさにそんな感じみたいです。

  • 「1度は食べてみたい」って思うじゃないですか。
    そして一度食べたら次に日本に来るなら「もう1回」となる。
    確実なるファンを世界中に作っていくことが出来る。

    生田
  • 安田

    トンカツの輪が世界に広がっていくと。

  • 世界中の70億人に受け入れられる必要はなくて。7,000人ぐらいで十分なんですよ。
    フィレンツェの靴屋と同じ。

    生田
  • 安田

    なるほど。コアなファンが世界中にいる状態ですね。

  • そう。7,000人の強烈なファンに支えられている「超こだわりのとんかつ屋」。
    つまりグローバルニッチです。

    生田
  • 安田

    日本にもコアなファンがいるみたいです。

  • そりゃいるでしょうね。多分とんかつマニアですよ。

    生田
  • 安田

    ボロボロのお店でスタートした時から「とんかつコース料理」だったそうです。
    しかもかなりの高単価で。勇気ありますよね。大阪の裏路地ですよ。

  • 通りすがりには絶対に入らないでしょうね。

    生田
  • 安田

    それが全国のとんかつ好きの間ですごく話題になったらしくて。

  • でしょうね。ターゲットの絞り込みが秀逸ですよ。

    生田
  • 安田

    「是非あそこでトンカツを食べたい」と全国から人が来たそうです。
    この成功ってたまたまだと思いますか?

  • いや、これはすごく本質に則ったやり方ですね。
    要は「トンカツというものにこだわり抜いた」「トンカツマニアでもあるシェフ」が「自分で揚げる究極のトンカツ」なわけです。

    生田
  • 安田

    実際にそうみたいです。
    学生時代にいろんなトンカツを食べ歩いて「自分だったらもっと美味しいトンカツを作れる」とずっと思っていたそうで。

  • その動機もいいですし、トンカツ愛と言いますか豚肉愛みたいなところが強いのも「ファンを惹きつけるエピソード」ですね。

    生田
  • 安田

    せっかく借金を返したのにまたリスクを負って万博に出て。やることがいちいち凄いです。

  • すべてがブランドにつながる物語になってますね。次に何をやるか楽しみです。
    個人的には「究極の7,000円トンカツ」を超える「至高の7万円とんかつ」を開発していただきたい。

    生田
  • 安田

    7万円のトンカツですか!

  • 実店舗で至高の7万円とんかつを提供し、究極のとんかつはコモディティ化させつつ全国に冷凍チルドでお届けする。

    生田
  • 安田

    凄いビジネスモデルですね。

  • グローバルニッチも獲れるし一般層にも手が届く。そしてこの方は大儲かり。

    生田
  • 安田

    さすがに7万円のとんかつは売れるのかな。
    席を増やして大型店舗を作ったほうが確実じゃないですか。

  • 大型店舗はやめたほうがいいです。ブランド価値が毀損するので。やっぱりグローバルニッチ戦略ですよ。
    いま世界中のインフレがすごいですから。海外からお金持ちいっぱい来るし。
    7万円のとんかつが完成したら一緒に食べにいきましょう。

    生田

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