> 対談一覧 > 第78回『BAR文化と日本の氷』
日本こだわりの技術を残していくために必要なこと
安田アメリカのBARや高級レストランで日本の氷が流行っているそうです。
氷ですか?
生田
安田はい。日本の氷はすごく品質が良いらしくて。
日本でオーセンティックなBARに行くとオンザロック用の氷を丸く削ったりするじゃないですか。
はいはい。あれは日本の文化なんですね。
生田
安田元々BAR文化はヨーロッパからカフェと一緒に渡ってきたそうですけど。
日本のBARは独自の進化を遂げたらしくて。
グラスにもこだわったりしますもんね。
生田
安田そうなんですよ。カクテルもオリジナルのものが多いですし味も全然違います。
インバウンドの影響なのか今すごく注目されていまして。
それで日本の氷が海を渡ったと。
生田
安田はい。日本のBARと同じ氷を使うお店が増えているそうです。
それは嬉しいですね。細部へのこだわりって日本人の一番得意とするところなので。
生田
安田そうなんですよ。言ってしまえば氷なのでアメリカでも買えるわけです。それをわざわざ日本から輸入してる。
日本人がこだわって作った氷は硬くて溶けにくくて透明感があるとか。
はいはい。イメージ湧きますね。グラスに当たる音もいいし。
生田
安田私がいた頃のアメリカからは想像できないですよ。ホテルでカクテルを頼んでもほんと適当で。
ソーダなんてホースから出てくるし、氷もすぐに溶けるマズい氷で。
アメリカ人の味覚も変わってきてるんじゃないですか。スタバもアメリカ発祥だし。
生田
安田そうなんですよ。昔は薄くてまずいアメリカンコーヒーしかなかったのに。
高級レストランや高級ホテルのBARってこだわりが付加価値ですから。
突き詰めていくと日本の職人が作った氷になっていくんでしょうね。
生田
安田まさにそんな感じです。
富山の氷屋さんらしいですけど、とにかくウチは「日本から輸入した氷しか使わない」みたいな店が増えていて。
こういうビジネスはありですよ。大企業がやるほどのマーケットじゃないけど儲かる。
生田
安田中小企業がやるべきビジネスモデルですよね。でも残念なことに日本の氷屋さんは減少していて。
BARで高いお金を払ってお酒を飲む人も減ってるし。
どんどん海外に進出するべきですよ。日本人はこういうものにお金を払わなくなってきてるから。
生田
安田私はBARで飲むのが好きなんですけど。
飲まない人も増えてるし、家なら100円で飲める酒に1500円払える人も減ってきてます。
原価を考えたら高いですけど、それを超える雰囲気とか付加価値がありますよ。
生田
安田いいグラスといい氷を使ってバーテンダーさんが一杯一杯つくるわけです。
だけどそういう付加価値にお金出す日本人が減ってきてる。
カチ割り氷の需要もどんどん減ってるんでしょうね。
生田
安田国内では減ってます。けど逆に海外では「高くても質の良い氷を使いたい」というこだわりの店が増えていて。
高くても飲んでくれる富裕層がいっぱいいるんでしょうね。
生田
安田富裕層の数が違うんでしょう。だから美味しさにこだわれる。
日本の氷で作ると水割りが水っぽくならないらしいです。見た目も綺麗だし氷がグラスに当たる音まで違う。
海外にはお金を出す富裕層がいくらでもいますから。
生田
安田潰れる前に日本の氷が海外で認めてもらえて良かったです。危うく無くなってしまうところですよ。
じつはウチにも氷屋さんのクライアントがいまして。
生田
安田そうなんですか。
氷って半導体と同じで装置の優劣がすごく品質に影響するんですよ。だから設備投資も必要で。
海外に売っていくならマーケティング投資も必要だし。
生田
安田そこは投資した方がいいですよ。
だけどマーケティングに投資している会社は地方にはすごく少なくて。
世界という規模感でアプローチしてるところはまず無い。地元密着系な会社がほとんどです。
生田
安田それだとジリ貧になっていきそうな気がしますけど。
そうなんですよ。買い叩かれるだけで。
新規顧客を増やすという動きをしていないからどんどんシュリンクしていってる。
生田
安田もったいないですね。
国内で高い氷が売れるのは都心部だけです。大阪の北新地とか。
生田
安田高級クラブもいつまで続くのか。早く海外に目を向けた方がいい気がします。
フランスの高級ワインも地元の人はほとんど飲まないらしいですから。
1本何万、何十万するワインは世界に売り出しているわけですよ。
生田
安田日本もそうなって行くべきですよ。高いものは海外に売るか、海外から来るインバウンドに売るか。
日本人としては悲しいですけど。こだわりの技術を残していくにはそれしかないでしょうね。
生田