> 対談一覧 > 第63話『お金と感性の境目』
日本人はお金も感性もなくなってきている
安田インバウンド(日本を訪れる外国人)がコロナ前に戻ってきたそうです。
確かに銀座を歩いているとすごい数です。
ほぼ戻りましたね。
生田
安田ただコロナ前とはちょっと傾向が違うみたいで。都心ではなく田舎が人気みたいですよ。
へえ。そうなんですか。
生田
安田はい。欧米の人に限らずアジア系の人も田舎に行くそうです。最近は青森が人気だったり。
青森ですか。
生田
安田もう都心部には飽きているみたいです。
都心部の楽しさは自国で経験できちゃうんでしょう。
生田
安田そうなんです。都心部で味わえる刺激なんて自国でいくらでも味わえる。
日本はもうアジアの最先端ではなくなっているみたいです。
東南アジアはすごい勢いで伸びていますからね。
でも青森というのはちょっと意外です。青森のどこに行くんですか?
生田
安田市場を見学したり。ねぶた祭りを見たり。
なるほど。徳島の阿波踊りのVIP席も外人ばっかりですもんね。
生田
安田大きなお祭りはどんどんインバウンド仕様に切り変わってます。
残念ながら日本人はお金と時間がないから。
生田
安田悲しいですけど。そういう傾向ですね。
観光で来る人たちはお金と時間があるから。自国では味わえないものを求めに行くんでしょうね。
生田
安田コロナ前は都心部も人気だったんですけど。
そういうステージなんですよ。僕も最初のタイ旅行ではバンコク行きました。
マレーシアではクアラルンプール、カリフォルニアだったらサンフランシスコに行くわけですよ。
生田
安田なるほど。都心部に行くのは最初だけだと。
そう。2回目3回目になると「マレーシアの秘境に行きたいな」ってなってきます。
生田
安田日本に来る外国人はもうそういうステージなんですね。
そう思います。でも感性のレベルが高いですよ。
日本人が興味を持たないような地方の文化や歴史に興味を持ったり。
生田
安田確かに。日本人が買わないような伝統工芸品もすごい人気だそうです。
日本人はまだ「人と同じことをやってる安心感」だとか
「人より上にいる優越感」を求めるステージなんですけど。
生田
安田感性という部分でも抜かれちゃったってことですか。
抜かれちゃったってことですよ。日本では未だに都心部に人が流れていくし。
地方で仕事がないわけでもないのに。
生田
安田都会で楽しむのって簡単ですからね。刺激もあるし店もいっぱいあるし。
田舎を楽しむのって教養やリテラシーが必要ですよ。歴史や文化や自然を楽しんだり。
そういうものを楽しむ文化的な土台が弱くなってるんでしょうね。
生田
安田ちゃんと歴史は教えているはずなのに。
知識として教えているだけなので感性が育たないんですよ。
感性が醸成されて、感性から好奇心とか熱量みたいなのが出てくる。
左脳から熱量は出てこないんです。
生田
安田外国人が頼みの綱ってことですか。日本の伝統文化や伝統工芸を維持していくのは。
そうですね。日本人は来ないし。そういうものを買わないし。
生田
安田もう割り切ってやっていくしかないと。
もうニセコみたいな感じでいいんじゃないですか。
生田
安田ニセコはラーメン一杯が2000円を超えるそうです。日本人が遊びに行っても高すぎてご飯が食べられない。
そうなりますよね。
生田
安田それでいいんでしょうか。
伝統工芸品はインバウンド相手でいいんでしょうけど。
メシの問題は非常に由々しき問題ですよ。もう日本人は安いものしか食べないので。
生田
安田ちょっと値上げしたら客が来なくなりますもんね。
知り合いの寿司屋が「来世は魚に関わりたくない」って嘆いてました。
いい仕事をしようと思うと本当に大変だって。
1人2万円って言ったら庶民から石を投げられるって。
生田
安田もう日本人には食文化を支える余裕がないんでしょう。
お金もないけど感性もなくなってきてる。だから余計に稼げなくなっていくんですよ。
生田
安田和包丁を買うのも外人さんがほとんどですからね。そもそも日本人は職人ぐらいしか使い方も知らないし。
日本人は安いステンレスの包丁しか買わないです。そうやってどんどん感性が廃れていくんですよ。
生田