> 対談一覧 > 第58話『個人ブランドと組織ブランドの使い分け』
中小企業は「世界の山ちゃん戦略」
安田いま「個人の時代」と言われてまして。髪を切る時も美容室ではなく美容師さんで選ぶじゃないですか。
それが色んな分野に広がってきて。
分かります。個人を入口にすることで企業も差別化しやすくなりますし。
生田
安田そうなんですよ。ただ効率が悪いことも確かで。
やはり「会社ブランドを高めていきたい」という意見も根強いです。
ある程度の大きさになったら個人ブランドでは難しいでしょうね。
生田
安田はい。エルメスのバッグも職人さんの名前で買うわけではないし。
エルメスぐらい大きくなると職人ブランドではなく会社ブランドですね。完全に。
生田
安田個人ブランドと会社ブランドは規模によって使い分けるのがいいんですかね。
コムデックさんはどうしてるんですか。
コムデックの場合は「kintone芸人」という個人ブランドが会社ブランドの基盤になってます。
生田
安田それは戦略的にやってるんですか?
はい。kintone芸人を通じて「kintoneに精通してます」「中小企業の成長をITで支援します」
というブランドを意識的に作ってます。
生田
安田つまり「個人ブランドが軸になっている」ということですね。
ブランドの作り方としてはそうなんですけど、
「この社長に仕事をお願いしたい」「このスタッフに仕事をお願いしたい」みたいなことはなくて。
生田
安田あくまでも企業名を浸透させるための個人ブランディングだと。
そうです。
生田
安田なぜ会社ではなく個人でやってるんですか。
ホームページの時代は企業ブランディングに向いてたんですけど。
SNSとか動画プラットホームであるYoutubeやTiktokになってくると、会社よりも個人の方が映えるんですよ。
生田
安田生田さんは社長だから一石二鳥ですよね。
オーナーパティシエと同じで「個人ブランド=会社ブランド」になるから。
でもkintone芸人の視聴者って僕が社長だとは思ってないですよ。一芸人だと思ってる人が圧倒的に多い。
生田
安田だけど生田さんがコムデックの社長であることは確かなわけで。
仮に「生田さんに相談したい」となっても問題ないですよね。
ひとりでは対応しきれないですけど、ブランドの立ち位置としてはアリですね。
生田
安田これが1社員だったら、その人が独立したり他社に移っちゃったら、お客さんも移っちゃう可能性があるわけで。
あり得ますね。
生田
安田つまり個人ブランドにあまり寄せすぎるのもリスクがある。
ただ時代の流れ的に、やっぱりSNSは個人でやった方がいいわけですよ。
「この人に頼みたい」「この人が作ったものを食べたい」という時代になっているので。
生田
安田つまり「〇〇さん指名でお願いします」という案件が増えていくと。
そうですね。業種にもよりますけど増えていくでしょう。
生田
安田だけど辞めちゃうリスクはある。
個人ブランドは「この人に頼みたい」という動機形成としてはすごく分かりやすい。
だけど俗人化したらその人のモチベーションとか体調とかいろんなものに左右される。
生田
安田そこがボトルネックになりますよね。
そうならない仕組みが必要です。個人を入り口にしつつ納品体制はチーム制にしたり。
個人に仕事を頼むのってリスクがあるじゃないですか。
法人だったら仮にその人がいなくなっても「ちゃんとやってくれる」という信用があるので。
生田
安田なるほど。
ルイヴィトンも昔は「この職人が作ったもの」ということで量が限定されてたはず。
だけど量を増やしてもブランドが維持できる体制を作った。それが今のトップメゾンですよ。
生田
安田確かにルイヴィトンはすごい量を作ってますからね。どうやってブランドを維持してるんでしょう。
ルイヴィトンのイメージとか、品質とか、修理体制とか、接客体制とか、
いろんなものが仕組み化されてブランドが維持されるわけですよ。
生田
安田なるほど。組織的なブランディングですね。
完全に組織ブランドです。ある一定の量を超えるとそこに向かわざるを得ない。
生田
安田逆に10人20人の会社の場合は組織ブランドって難しいですよね。お金もないし。
社長が中心となって個人ブランドを集客の入口にした方がいいでしょうね。
それで大きくなったら社長からキャラクターに変えていく。「世界の山ちゃん」みたいな感じで。
生田
安田なるほど。中小企業は「世界の山ちゃん戦略」ですね。
個人ブランドから始めてチームブランドにして組織ブランドにしていくと。わかりやすい。