> 対談一覧 > 第27回『前提を疑える組織』
「なぜ?」が大事
安田決めたことを自ら疑える組織?
そうじゃないと、これから生き残っていけないでしょう。
生田
安田1回決めたことを、そのままやり続けるのは危険だってことですか。
僕は毎日思うんですけど。「なんで赤信号を守らないといけないのか」って。
生田
安田生田さんは守らない派ですか?
夜は守らないですね。まわりを360度確認して、リスクがなければ。
生田
安田車が来てなければ渡る?
はい。車を運転している時は信号無視はしないですけど。
生田
安田そういう人が多いですよね。歩行者の時は信号無視するけど車では信号無視しない。
多いでしょうね。
生田
安田車がまったくいない道路で「赤信号を守る意味があるのか」ってことですよね。
はい。
生田
安田私もそれについては考えたことがあります。なぜ歩行者は信号無視するのに車はしないか。
これはやっぱり罰金の大きさだと思うんですよ。
そうですね。リスクの大きさの違い。
生田
安田でも罰金の重さによって行動が変わるってことは、ルールを決めた人に行動をコントロールされていることになりませんか?
なるでしょうね。
生田
安田私は人にコントロールされるのが嫌なので、歩行者のときも「絶対赤信号は渡らない」と決めてます(笑)
なるほど(笑)
生田
安田他人に自分の行動をコントロールされるというのが耐えられなくて。
安田さんは「絶対走らない」って決めていますもんね(笑)
生田
安田そうなんです。重要なアポイントに遅れそうでも絶対に走らない。
だから予定よりもかなり早く出かけます。
徹底してますね。ちなみに僕が言う「決めたことを疑う組織」というのは、存在意義ってことなんですよ。
生田
安田存在意義ですか。
たとえばコムデックの存在意義は「中小企業や経営者の困りごとを解決すること」なんですよ。
だけど「困りごとってコロコロ変わるよね」ってことですね。
生田
安田なるほど。確かに課題は変わりますよね。
そうなんです。だから「言われた課題にはちゃんと答えました」なんてことには意味がなくて。
生田
安田日本の法律みたいですね。環境はぜんぜん違うのに法律だけ昔のままで。前例に則ってとか言っちゃって。
それと同じことがビジネスの場面でもよく起こります。
「ここにこう書いてあります」とか。「先月○○って言ってました」とか。
日本は「事実」を基準にしているので。
生田
安田事実はそうだけど、その通りやっても意味ないことってありますもんね。
僕らの業界はとくにそういうことが多くて。「仕様書にこう書いてあります」とか。
生田
安田メガバンクのシステムもそれで大変なことになってます。
マイナンバーカードのトラブルとか。根っこは全部同じです。決めたことを疑わないから。
生田
安田でも、決めたことを変えるって勇気が要りますよね。
大企業でも「いまさら実力主義とか言われても困る!」って人がたくさん出てきて。
そういう人はもう辞めてもらうしかないです。
生田
安田辞めてもらうしかないですか(笑)
私もつい最近、家族手当を廃止しました。
お子さん1人目に対して1万円、2人目からは5,000円×人数という手当だったんですけど。
生田
安田なぜやめたんですか?
今は共働きも多いし「どっちの扶養なの?」ってなる。家族構成も多様化してるし、シングルも多いし。
生田
安田時代にそぐわないってことですね。
そもそも「家族がいる・いない」で給料を変えるっておかしいですよね。
合理的な判断だと思えない。
生田
安田「貢献度は低いけど家族がたくさんいる人」の給料が高くなってしまいます。
でも日本の会社はそういうウエットなことを重要視してきました。
現代社会にはそぐわないと思いますね。
生田
安田「若い頃に頑張ってくれたから」ではダメですか。
もちろんリスペクトはあるんですけど。それを報酬にしてしまったら若い人がついてこない。
生田
安田確かにそうですね。
「昔こうしてました」「こう言ってました」「こう書いてます」「こう教えられてます」っていう、当時の事実で物事を判断する日本人があまりにも多い。
生田
安田確かにそれは日本人の悪い癖ですね。
「うちの会社は価値基準だ」と伝えてます。
「お客様の困った」が変わったり、「自分たちのあるべき姿」が変わった瞬間に朝令暮改、君子豹変するのは当然だよって。
生田
安田社長として「この方針でいくぞ」って決めたことでも、時間とともに変わることがあるじゃないですか。
ありますね。
生田
安田そういう場合はどうするんですか?「黙ってついてこい」って感じですか。
いや、謝りますね。「あれ間違ってたわ、ごめん。こっち行くからついてきて」って。
生田
安田一応謝るんですね(笑)なるほど。
だって人生を賭けてくれていた人たちの時間を、ちょっと無駄にしちゃってるわけじゃないですか。そこに対する謝罪です。
生田
安田たとえば社員に「自分で決めろ」って言ったけど、決めてきたことが全くダメだから「やっぱり俺が決める」みたいなこともありますか。
それは山のようにあります。どんどん権限は委譲しますし、やってみてもらってるんですけど、最後にハンコを押すかどうかは自分が決めます。
生田
安田「決めたことを疑う」ことに関してですけど、レベルの問題ってありませんか?
どういう意味ですか。
生田
安田たとえば末端の社員までいちいち考えてたら、組織として効率が悪いじゃないですか。
末端の社員は100パーセント盲目的についてこいって思いませんか?
思わないですね。
生田
安田なんと!
「100パーセントあなたの言うとおりです」「何を言われても付いていきます」みたいな組織は、ちょっと気持ち悪いです。
生田
安田そういう組織が好きな社長さんは多いですけど(笑)
社長より目標の方が大事なので。
目標が最も崇高であって、僕を飛び越えてもっと正しい判断ができるならやればいい。
1次情報は現場の人間のほうが持っているわけで。
生田
安田社長の指示を盲目的にこなすだけじゃなく、「本当にこれでいいのか」って考える習慣をつけてほしいと。
そうです。とにかく「なぜ?」って聞かないと。ニーズとウォンツは違うので。
生田
安田その分スピードはちょっと落ちますよね。
言った瞬間に動いて100%のクオリティが出せるほど、僕らの仕事は簡単じゃないので。
生田
安田なるほど。
単純な仕事なら言ったとおりやってくれたら最大品質になる。
でも複雑性が増せば増すほど、「なぜそれをやらなきゃいけないのか」という前提を考えないと。品質はすごく毀損すると思います。
生田