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Conversation対談

2023.07.10

第25話『良いムダと悪いムダ』

テーマ「デジタル化の次に来るもの」

いいムダと悪いムダの境目

  • 安田

    「ムダなことはよくない」という時代が長かったじゃないですか。

  • 生田
  • 安田

    できるだけムダをなくす。「ムリ・ムダ・ムラをなくそう」みたいな標語があって。

  • できるだけムダをなくす。「ムリ・ムダ・ムラをなくそう」みたいな標語があって。

    生田
  • 安田

    それでムダを削った結果、独自の価値までなくなっちゃって。
    価格競争でどんどん儲からなくなってます。

  • 前にも言いましたけど、いいホテルほどムダなものがあったりするんです。ムダなプロセスというか。

    生田
  • 安田

    便利すぎると逆に安っぽくなるんですかね。

  • そう思います。

    生田
  • 安田

    車をわざわざ駐車場まで持っていくバトラーとか。自分で駐めたほうが早いですけど(笑)

  • 経済的に価値のあるムダってありますよ。無意味なムダもありますけど。

    生田
  • 安田

    その境目ってどの辺りにあると思いますか?

  • 「機能」と「意味」の間にあると思います。

    生田
  • 安田

    機能と意味?

  • ホテルの話でいうと、寝るだけだったら「安くて、駅直結で、フロントと部屋が近くてコンパクトで、枕元に充電ケーブルがぶら下がってりゃ」いいんです。

    生田
  • 安田

    合理的な人が選びそうなホテルですね(笑)

  • 機能だけを考えたらそうなるんですよ。

    生田
  • 安田

    「どうせ寝るだけだし、朝も早いし、駅から近いほうが仕事には便利だろ」っていう。

  • マンダリンホテルなんて超不便ですよ(笑)

    生田
  • 安田

    駅から遠いし。フロントから自分の部屋に行くのも面倒だし。

  • そうなんですよ。しかも1泊15万ですからね。

    生田
  • 安田

    1泊15万!寝るだけだともったいない(笑)

  • 実際には数時間しかいませんからね。

    生田
  • 安田

    ですよね。

  • だけどそれはムダじゃないと思ってます。

    生田
  • 安田

    何をもってムダじゃないと感じるんですか。
    ムダだと思っている経営者のほうが圧倒的に多いですよ。

  • 機能的には、まあ、つじつま合ってねーなとは思います。

    生田
  • 安田

    ですよね。

  • 機能を求めるならばトヨタでいいわけですよ。ベンツやBMWは壊れやすいし、修理費用はめっちゃ高いし。

    生田
  • 安田

    いいところなしですね(笑)

  • 機能でいうと当然トヨタよりも劣っている。にもかかわらず値段が高い。

    生田
  • 安田

    それはなぜですか?

  • なぜ高くできるかっていうと、値段を決めているのが客じゃないから。
    メーカーが自分たちで売値を決めてるんですよ。

    生田
  • 安田

    トヨタは違うんですか?

  • トヨタは客に決めさせられているんですよ。「日産以上BMW以下だからこれぐらいの値段ですよね」って。

    生田
  • 安田

    BMWより高いと売れないってことですか。

  • 売れないと思いませんか?

    生田
  • 安田

    ベンツより高いんだったらベンツを買っちゃうでしょうね。

  • そうなんですよ。

    生田
  • 安田

    機能だけでは高くできないってことですか。

  • 圧倒的に機能が優れてたら上げれると思います。けど機能と価格って綿密に連動しているので。
    市場や顧客がそこに介入してくるわけです。

    生田
  • 安田

    どういう意味ですか。

  • たとえばホテルを探すときに「駅から何分。部屋の広さはこれぐらい。朝食が付いている」みたいな機能は比較できるんですよ。

    生田
  • 安田

    実際みんな比較しますよね。

  • 比較して「この機能が付いてる割に安い」という選び方になる。つまり費用対効果で選ばれるわけです。

    生田
  • 安田

    なるほど。機能と価格はセットだと。

  • そうです。だから「いいムダと悪いムダ」という話でいくと、機能のムダはダメなんですよ。

    生田
  • 安田

    余計な機能を付けても費用対効果が悪いと買ってもらえない。

  • そういうことですね。そのムダが吉と出るか凶と出るか。
    ここをちゃんと考えないと意味のないムダになってしまいます。

    生田
  • 安田

    出張で1泊15万のホテルに泊まるって、ある意味すごくムダだと思うんですけど。
    これが吉と出る可能性もあるんですか。

  • 僕のなかで吉と出るのは分かっているので。

    生田
  • 安田

    え!分かってるんですか。

  • はい。勉強であり投資です。ラグジュアリーホテルとビジネスホテルの違いを肌で感じる。
    kintone事業にその価値を組み込む。そこが今後の大きなポイントになってきます。

    生田
  • 安田

    kintone事業の中にラグジュアリーホテルの価値を組み込む?すごく難しそうですね。

  • 簡単ではないと思ってます。だからこそ他社は真似ができないし、価格に反映できる価値が生まれてくる。

    生田
  • 安田

    多くの中小企業にとっての課題ですね。難しいけど越えなくちゃいけない壁というか。

  • そこを越えられないと安売りで身を削っていくしかない。どこかで行き詰まってしまいます。

    生田
  • 安田

    なるほど。そのためにはラグジュアリーホテルに泊まることもムダではないと。

  • 単なる機能ではない価値を学ぶには、そういう体験は大事だと思います。

    生田
  • 安田

    体験してその価値を実感されましたか。

  • 結局、機能は「便利だった」という記憶が残るだけなんです。
    でも意味のある体験というのは「思い出」がついてくる。

    生田
  • 安田

    確かに。思い出に残りますね。

  • 機能だけを追求していくと、どんどん人を介さなくなると思うんです。

    生田
  • 安田

    ビジネスホテルのチェックイン・チェックアウトはその方向ですね。
    カードを入れて「ピッ」で終わっちゃう。

  • 人を介して丁寧に接客すると当然ムダも発生しますし。イレギュラーもあります。
    でもそこでしか意味や思い出は生み出せない。

    生田
  • 安田

    チェックインにめちゃくちゃ時間がかかるのは嫌ですけど。
    ラグジュアリーホテルでカードを入れて「ピッ」で終わるのも嫌ですよね。

  • 思い出作りの旅行には物足りないですよ。ただそのほうが1秒でも早く部屋には行ける。

    生田
  • 安田

    行けますね。ラグジュアリーホテルはエレベーターまで遠かったりするし。

  • そうなんです。だけどその遠回りにまた意味があるわけですよ。

    生田
  • 安田

    機能性は劣るけど意味のあるムダですね。

  • 機能を追求するのか意味を追求するのか。「このビジネスはどっちでいくのか」ってことを経営者が正しく判断しないと。
    ただの大量生産安売りになっちゃう。

    生田
  • 安田

    その判断が一番重要ですね。

  • いいムダと悪いムダの境目はそこにあると思います。その境目を見極めるのは経営者しかない。
    そのための体験は決してムダにはならないですよ。

    生田
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