 >  対談一覧  >  第30話『営業という肩書がなくなる日』
  >  対談一覧  >  第30話『営業という肩書がなくなる日』
マーケティングの目的は営業を不要にすることだ
 安田
安田私、ずっと前から言ってるんですけど。営業という肩書がいずれなくなると。
営業という言葉も死語になると。生田さんはどう思いますか?
その通りだと思いますよ。みんな売られるのが嫌いなので。
 生田
生田 安田
安田ですよね。無理やり売ろうとするほど、売りにくくなって。
お客さんに「自分で発見してもらって、納得してもらって、買ってもらう」。
この仕組みを作り出せない会社はもう生き残れないでしょう。
 生田
生田 安田
安田いまだにガンガン営業やってる会社もありますけど。広告もガンガン出したり。
広告なんて具の骨頂ですよ。
 生田
生田 安田
安田愚の骨頂ですか(笑)
まあ広告は広告屋さんが儲かるように出来てますからね。
基本的に僕はドラッカーが好きで。マーケティングの目的は営業を不要にすることだっていう。
 生田
生田 安田
安田私もそのフレーズ大好きです(笑)
「買ってくれ」なんて言わなくても、本当に相手にとって必要なものなら自然と愛されるはずで。
広告は必要ないし営業する必要もない。
 生田
生田 安田
安田「買ってくれ」と言った瞬間に値下げ要求されますよ。
「売ってください」だったら「いくらだったら買いますか」って、こっちが主導権を取れるわけで。
 生田
生田 安田
安田買ってもらった後の満足度も高いですし。顧客フォローも簡単だし。
だけど未だに広告と営業の掛け算で売ろうとする人が多い。
 生田
生田 安田
安田私は近いうちに営業マンという人種が表舞台から消える気がします。
人に言うのが恥ずかしい言葉になっていく気がしますよね。
 生田
生田 安田
安田「え!まだ営業やってんの?」とか言われそうな(笑)
広告もそうなっていきますよ。
 生田
生田 安田
安田昔はテレビCMやってる会社が「すごい」って言われましたけど。
東芝もずっとサザエさんのCMスポンサーをやっていて。
今は逆ですよ。ガンガン広告してる会社は「売りたいんですね」っていう。
 生田
生田 安田
安田視聴者にそれがバレちゃってますよね。
全ての広告が悪いとは言いませんけど。売らんが為の広告は逆効果ですよ。
 生田
生田 安田
安田売ろうとしない広告なんてあるんですか?
ビジネスの種類によってありますよ。欲しいと言ったら全員が買えるものなのか。
欲しいと言っても数量限定で買えないものなのか。
 生田
生田 安田
安田たとえばどんなビジネスですか?
たとえばエルメスやシャネルが都心のど真ん中に店を構えるのは、「たくさん買ってください」の広告ではないですよね。
 生田
生田 安田
安田ほとんどの人は買いませんからね。やたら入りにくいし(笑)
そうそう(笑)ブランドって「認知マイナス普及」なんですよ。
 生田
生田 安田
安田認知マイナス普及?
知ってるし、欲しいけど、買えない。そういう人が増えれば増えるほど、買える人のステータスが上がる。
 生田
生田 安田
安田なるほど!
つまり買わない人を増やすための広告ですね。これは効果が落ちないと思います。
 生田
生田 安田
安田数量限定のテレビショッピングはどうですか?
「おひとりさま2個まで」とか「先着300名様限定です」とか。
あれは値引きとセットの煽り商法じゃないですか。
 生田
生田 安田
安田そういうイメージです(笑)
もっと練り込まれた広告じゃないと、価値が劣化していきます。
 生田
生田 安田
安田テレビCMをやるだけで「すごい会社」と思われる時代はもう終わりですか。
安田さんが言うようにもう視聴者にバレちゃってます。
今は広告の出し方が非常に大事ですよ。
 生田
生田 安田
安田広告に見えないように広告を出さなきゃいけない。
そうなんです。リスティング広告が効かなくなってるのもまさにそこで。
 生田
生田 安田
安田ご葬儀の会社がリスティング広告を出したら「成約率が下がった」と聞きました。
だって広告をガンガン出してるような葬儀会社に、お葬式頼みたくないでしょう。
 生田
生田 安田
安田昔はそんなことまで考える顧客はいなかったですよね。
ユーザーのリテラシーがめちゃくちゃ高くなってますから。
だからヘタな広告を出すと逆効果になるんです。
 生田
生田 安田
安田でも、何もしないと売れないですよ。
だから工夫が必要で。
 生田
生田 安田
安田どんな工夫がいいんですか?
色々ありますけど、たとえば「無料で資料をダウンロードできます」というアプローチもそうですよね。
 生田
生田 安田
安田あれも広告ですか?
マーケティング戦略ですね。見込み客リストを収集するための。
 生田
生田 安田
安田顧客からしたらダウンロードするのって面倒じゃないですか。
ちょっと面倒だったり、ちょっとお節介だったりが、ちょうどいいんです。
そこがマーケティングの腕の見せ所というか、考え所です。
 生田
生田 安田
安田なるほど。簡単すぎてもダメなんですね。
ティッシュ配りみたいになってしまうとダメですね。「誰でもいい」感が出てしまうので。
「必要な人だけ」「選ばれた人だけ」と感じてもらうことが大事。
 生田
生田 安田
安田そう考えると、営業なんていう肩書きは愚の骨頂じゃないですか。
そうですね。使ってる人はそこまで考えないんでしょうけど。
 生田
生田 安田
安田保険の営業は「ファイナンシャルプランナー」が増えてきました。
「営業だろ」ってもうバレ始めてますけど。
年配の人には受けるんでしょうね。若い人には通用しないですけど。
 生田
生田 安田
安田若い人ほど「売られる」のが嫌いですよね。
自分で見つけて、自分が納得するものを買いたいっていう。
若者になるほど難しいですよ。情報リテラシーも高いし。
ハズキルーペのようなやり方は通じないですね。
 生田
生田 安田
安田あれは完全に年配層を狙ってますよね。がんがんテレビCMやって。
CM代を買わされてるみたいなもんですけど。
リテラシーの高い人はそう思うわけですよ。
 生田
生田 安田
安田今は50代でもリテラシーの高い人が増えてます。
はい。どんどん増えていくと思います。だから売り方を工夫するしかないんです。
 生田
生田 安田
安田リターゲティング広告でしたっけ。追いかけてくるやつ。
あれも最初はそんなに気にならなかったんですけど。
広告だと気が付いてなければ気にならないんです。
だけど一旦気づいてしまうとすごく鬱陶しい。
 生田
生田 安田
安田広告だとバレた瞬間に効果が落ちてしまうと。
はい。そう考えると「営業マンはいずれ要らなくなる」というのも必然ですね。
 生田
生田 安田
安田ですよね。「いずれ営業という肩書きは消える」って、ずっと言い続けてるんですけど。
ようやく共感してくれる人に出会えました(笑)
いつ頃から言ってたんでしたっけ?
 生田
生田 安田
安田20年前からです。
安田さんは言うのが早すぎるんですよ(笑)
 生田
生田