 >  対談一覧  >  第16話『キャバクラとITの共通点』
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キャバクラの店長とIT企業の社長は紙一重
 安田
安田キャバクラから畑違いのIT企業に就職して、今やコムデックの社長になったわけですね。
はい。
 生田
生田 安田
安田キャバクラ店長とIT企業の経営者って、何か共通点はありますか。
ありますね。まず無形資産であること。どちらも「時間を提供する」仕事なので。
 生田
生田 安田
安田なるほど。
そうすると、もっとも重要なのが「期待値のコントール」なんです。
 生田
生田 安田
安田期待値のコントール?
無形資産を売るときには、期待値のコントロールが欠かせないわけです。
 生田
生田 安田
安田キャバクラではどうやってコントロールするんですか?
キャバクラだったら「デリバリー」と「コスト」は明確なわけです。
 生田
生田 安田
安田デリバリーとコスト?
デリバリーは時間軸、コストは予算軸みたいなところです。
 生田
生田 安田
安田なるほど。「何分いくら」ってことですね。
そうです。だけどクオリティ軸はまったく分からないわけですよ。
 生田
生田 安田
安田入ってみるまで分からないですね(笑)どうやって期待値を調整するんですか?
多い時には3回〜4回女性が入れ替わる。少なければ2回。
その中でどれぐらい顧客の期待に応えられるかを考えるわけです。
 生田
生田 安田
安田「今日はかわいい子いませんよ」って、あらかじめ言っておくとか。
「かわいい子いませんよ」は、さすがに言えないです(笑)
 生田
生田 安田
安田そうなんですね。
ただ常連様に関しては、「10段階で、前回いらしたときを8だとすると、今日は6.5ぐらいです」とか。
そこはやっぱり正直ベースで言います。
 生田
生田 安田
安田意外と正直ですね。
ローカルキャバクラとローカルIT企業の大きな共通点は「リピーターが重要」ということなんです。
 生田
生田 安田
安田ローカルが関係するんですね。
都会はゴロゴロお客さんがいますから。人も多いし企業もたくさんある。
 生田
生田 安田
安田なるほど。
だから「次にいきましょう」でいいわけですよ。「ちょっとぐらい炎上しても次頑張ればいいや」と。
要は毎回リセットされて新規が続いていく。
 生田
生田 安田
安田都会は焼き畑農業でも生きていけると。
そんなのはローカルでは絶対通用しないわけです。
 生田
生田 安田
安田悪いうわさが広がっちゃいますもんね。
お客様が少ないですし、圧倒的にクチコミは重要なので。毎回毎回、丁寧に耕して、丁寧に作物をつくる。
 生田
生田 安田
安田丁寧な農耕型しか成り立たない。
無形資産というソフトをつくり上げて、お客様に満足してもらって、追加のオーダーをもらったり、誰かを紹介してもらったり。
 生田
生田 安田
安田まさに顧客との関係性ですね。
それを紡いでいくのがローカルビジネスなので。そこはローカルのキャバクラとローカルIT企業の共通点ですね。
 生田
生田 安田
安田ITの場合も「ここまでしか無理です」って言っちゃうんですか?
言っちゃいます。できないことは「できない」って。
 生田
生田 安田
安田「今回の予算や納期ではこれは無理です」みたいな。
「フェーズ1はここまでいきましょう」とかですね。
 生田
生田 安田
安田なるほど。つまり「オーバートーク」は絶対だめってことですね。
ダメです。期待を裏切ると二度と発注してもらえなくなるので。とくに新規のお客さんはそこが重要ですね。
 生田
生田 安田
安田最初にいい印象を持ってもらうってことですか。
たとえば僕がキャバクラをやってた頃は、まだキャバクラ慣れしてない人が多くて
うちのグループが三重県のキャバクラ1号店だったので。
 生田
生田 安田
安田そうなんですね。
だからしっかり説明しておかないといけない。デリバリーすらご理解いただいていなかったり。
 生田
生田 安田
安田時間制だと分かってないってことですか。
当時の都会のキャバクラって、お客様が「出ます」って言うまでずっと自動延長なんですよ。
 生田
生田 安田
安田勝手に値段が上がっていきますよね。
だけど三重県の人はキャバクラ経験がないわけです。名古屋、東京、大阪に飲みに行った人以外は。
 生田
生田 安田
安田つまり時間が過ぎたら価格が上がっていくことを知らないわけですね。
そうなんです。だから説明しておかなくちゃいけなくて。
 生田
生田 安田
安田まあ、知らないわけですからね。
基本料金が50分5,000円です。有料のドリンクを飲んだり、女の子を指名したりすると加算していきます。
50分たったら自動的に50分延びて5,000円追加されます。
 生田
生田 安田
安田親切ですね。
ところが100分を過ぎた頃にお客さんが聞いてくるわけですよ。「ここって何時までおっていいんやっけ?」って。
 生田
生田 安田
安田ほう。
「お客様が帰るとおっしゃるまで、いていいんですよ」って答えるじゃないですか。
 生田
生田 安田
安田そうとしか答えようがないですよね。
そしたら「料金は?」って聞いてくるので「50分ごとに加算されていってます」と。
その途端に「話ちがうやん!」ってなるわけです。
 生田
生田 安田
安田「上がる前に言え」ってことですか。
キャバクラ界の常識は自動延長なんですけど、三重のお客さんの常識は「50分たつ前に声かけろ」なんです。
これはIT業界にも往々にして起こることで。
 生田
生田 安田
安田IT業界にも?
システムを開発している側の常識と、システムを発注している側の常識は、ぜんぜん違うんです。
 生田
生田 安田
安田「夢のようなシステムをつくってくれる」と思っている人もいるわけですね。
期待値をすり合わせること。常識をすり合わせること。それがキャバクラとIT業界に共通して必要なことですね。
 生田
生田 安田
安田キャバクラの“回しスキル”は役に立ってますか?「この会社にはこのエンジニアをつけるとうまくいくな」とか。
役立ってますね。相性はすごく大事ですから。
 生田
生田 安田
安田相性というのは「好き嫌い」ですか。
好き嫌いもあるんですけれどデコボコもあります。
 生田
生田 安田
安田デコボコ?
たとえば「課題を言ってくれる人」がお客さんだったら、それを聞いてきちんと技術に落とし込む人をアサインしたほうがいい。
 生田
生田 安田
安田なるほど。
あまりITリテラシーがなくて、ぼんやり「こんなことをやってほしいな」という人に対しては、課題をくみ取れる人、つまりコミュニケーション力の高い人がいい。
 生田
生田 安田
安田期待値調整と回しの仕事。まさにキャバクラ店長ですね。
はい(笑)基本は同じです。
 生田
生田